沖縄独立が現実味

「沖縄の私たちはヤマトとは違うし、もう二度と地獄の道連れにされるのは真っ平御免なのだ」。沖縄近現代史を研究する伊佐眞一は「みすず」(1&2合同号)読書アンケート特集でこういい切る。沖縄知事選、衆議院選挙で明らかになった民意は、鹿児島や山口、神奈川といったそれぞれの郷土の特性といえるようなアイデンティティとは同列ではない。沖縄のそれはあくまでヤマト(日本人といってもいい)との比較を念頭において発せられている。つまり、沖縄・琉球が日本に武力併合されて以来、じつに近代100年余の対ヤマト関係史が背景にある。いままさに焦点になっている辺野古の最新鋭軍事基地建設を是認するヤマト批判を内包している。沖縄近現代史の最突端の動きであって、それは批判などという薄っぺらなものではなく、ヤマトへの我慢ならない根深い不信が奥深く潜んでいる。自民党が沖縄の全選挙区で落選したのは、その政治政策への反発に止まらない、沖縄人のヤマトへの怒りの発露といっていい。沖縄に寄り添って、理解してもらうと繰り返す政府の対応は大きく見誤っているようだ。
 その沖縄県政を担う翁長知事がワシントンに沖縄事務所を出す。寺島実郎はこの事実の背景にあるものを月刊「世界」で探っている。1879年の明治政府による「琉球処分」までの450年間は、東シナ海の独立国として琉球王国が存在した。かのペリー提督も日本来航時に5回も沖縄に寄港し、独立国として「琉球・米国修好条約」を結んでいる。その関係において沖縄からのハワイ移民に注目している。ハワイが米国に併合された1898年以降の1900年が最初で26人だが、1924年の「排日移民法」で禁止されるまで続き、全移民約22万人のうち沖縄からは4万人とされる。沖縄移民の父とされる当山久三は民権思想家でもあったが、琉球処分に抵抗して、希望をハワイに託す渡航であったと記す。そして2014年ハワイ州知事にその沖縄移民3世のデービッド・イゲ(伊芸)が当選した。彼の父は第2次大戦時に欧州戦線で活躍した。ハワイ日系人からなる部隊で、イタリア戦線で活躍し、「死傷率314%」(ひとりで何回の負傷したため)という伝説を残して日系人の評価を変えさせた象徴的な存在だ。アメリカの沖縄政策も国務省と国防省では違っているが知らせないようにしている。そんな日本政府の対米従属一辺倒の対応に頼れないという判断が沖縄にある。沖縄返還から40年余、本質的な意味では祖国とはいえない日本への復帰だったが、その心情は平和憲法にあったことは間違いない。それが中国の脅威が増す中で、日米同盟強化で戦うしかない、在沖米軍基地は不可欠どころか、より強固にしなければならないという論理で思考停止となってしまっている。日中軍事衝突で沖縄が真っ先に攻撃対象となるということは真っ平御免というのが冒頭の伊佐に代表される民意は当然である。
 そうした危機感から、沖縄の日本からの分離・独立があり得ないとはいえない段階に入っているのだ。経済的な独立への展望も切り開くとすれば、中国は大きな経済援助構想を持ち出してくるだろう。改憲の動きがますます加速するとすれば、沖縄の分離独立の目指す住民投票も現実味が帯びてくることは必至である。沖縄は本土決戦の捨石となって、住民9万余を含む24万4000人が犠牲になり、大田實海軍中将が打電した「沖縄県民斯ク戦ヘリ 県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」を記憶に止めるならば、住民投票の正当性を支持していきたい。戦後レジームの転換はアベクンが企図しない意外な展開になるかもしれない。
 息絶え絶えで萎縮する本土マスコミだが、沖縄タイムス・琉球新報は健在であり、辺野古の暴挙をしっかりと伝えている。いまこそ沖縄をきちんと見据えていかなければならない。

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