「性風俗サバイバル」

 コロナが女性を追い詰めている。とりわけ性風俗で働く人は瞬く間に収入と居場所を失った。しかし、その彼女たちを必死に支援する活動が行われていた。「性風俗サバイバル」(ちくま新書)。新書売り場で手にしたが、立ち読みで逃げるんですか、そんな著者・坂爪真吾の声が聞こえた。一般社団法人ホワイトハンズを08年に新潟で立ち上げ、「新しい性の公共をつくる」というミッションを掲げる。実践もすごい。重度身体障がい者に対する射精介助サービス、風俗店で働く女性のための「風テラス」などを運営している。性の公共とは何か?おじいちゃんにもセックスを、とどうつながるのか興味は尽きない。本論に入る前に、上野千鶴子の門下生なので、彼女の評価を紹介する。

 タテマエじゃなくてプラグマティックな解決を提案し、かつ実践している。日本の社会保障は自己申告主義だから、当事者が自分から制度につながらない限り、なんの役にも立たない。だから、「アウトリーチ」というのがすごく大事。だから、「風テラス」ってすごいねと思った。「性風俗のいびつな現場」もよかった。フィールドワークして、現場を踏んで、判断するというのは社会学者の鏡だ、と愛弟子にエールを送る。

 さて、その「風テラス」にコロナ禍で、ラインやツイッターからの相談が殺到した。坂爪本人に加えて、弁護士、ソーシアルワーカーが対応する。1日60人を超えるとパンク状態になり、午前2時を過ぎることも。号泣する相談者相手に、生活保護をひたすら勧める。申請が断られたら、弁護士に相談するからと理由を聞き取ってください。後日弁護士が同行する。性風俗を公助につなげたいのだ。しかし、それで申請に動くほど単純なものではない。性風俗で働く女性への世間の壁、女性自身が抱える不安の壁は手ごわい。「電話をしてくれてありがとう」がどう響いているか。

 断っておくが、風テラスはボランティア団体ではない。弁護士、ソーシアルワーカーに謝礼を払っている。相談者が急増すると資金が尽きかねない。収入は個人団体、それから店舗からの寄付で毎月20万前後だが、講演謝礼や、本の印税もつぎ込んでいる。

 性風俗の女性たちの状況は切迫している。待っていても客が来ないなら、路上に立って直引き売春となる。そんな現実を前に、坂爪は600万円のクラウドファンディングで勝負に出る。性風俗女性支援でどれほどの共感が得られるか。「夜の世界で孤立する女性・1万人に支援を届けるプロジェクト」と銘打って、20年7月8日から10月5日までの90日間を突っ走った。イベントはもちろん、風俗情報サイトに50万円の広告も打つ。狙いは男性客である。持続化給付金などで排除されるこの業界に、日頃愛用する男性客の胸は痛まないのか。数兆円の市場規模があり、唸るほどお金を持っている奴が山ほどいる世界。この業界で働く女性全員を指名する心意気があっていいだろう。それでも100万円をポンと出す男、残額すべて払うという男も出て、達成する。ようやくコロナ禍で誰もが性風俗の当事者になった。風俗で働くことを肯定も否定もしないことの大切さ。彼女たちを応援したいのならば、消費者として、金払いよくマナーを正して風俗を利用すること。それに尽きる。

 最貧困女子を消費するおじいちゃんのセックスという構図になるが、上から目線の憐憫で解決するものではない。70代のおばあちゃんは松井久子の「疼くひと」を、60代は原田純の「ちつのトリセツ」を読んでほしい。性の公共は人間を解放を目指す。お互いに尊厳を込めて解放されよう。

 

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