「風の盆」を買う

観光客に来てほしくない祭りである。家の主人はともかく、家人特に主婦をはじめとする女性陣は、「もうやめて」と切れそうな表情だ。八尾町自身も正直、迷惑顔で困惑しているといってもいい。収支を考えれば町の完全な持ち出し。ことしの9月1日は特にすさまじかったらしい。狭い坂の町が人でごった返したという。ご存知「風の盆」だ。

2日。久しぶりに誘われて出かけた。中学時代の同級生2夫婦と一緒に。午後5時過ぎ、5人でタクシー1台に相乗り。渋滞に巻き込まれるかと危惧したが、意外にスイスイと八尾の町に入りこむことが出来た。意外と交通規制が行き届いている。

今回お世話になるNさんとは全く面識がない。同級生の飲み友達というつながりだけ。上がり込んだNさん宅には既に多数の先客。居間、食堂、座敷はそれぞれのグループが席を占めている。われわれが入ると「どうぞどうぞ」と先客が席を詰めてくれる。「おーい」とのご主人の声に、ふきんを片手に奥さん。テーブルを片づけて、ビール、グラス、取り皿が手ぎわよく並ぶ。続いて刺し身、鮎の塩焼き、煮物が運ばれる。この繰り返しが3日3晩、延々と続くのだ。先客もわれわれも、Nさん一家にとってはほとんどが見知らぬ人。友達の友達、親戚とのつながり、取引先の紹介、あらゆる「」がこの時とばかりに動員される。ひょいとFaxに目をやると、前副知事の新原氏から「恐縮ですが、東京の友人5人の面倒をお願いしたい」。Nさん窮余の一策で、お寺に頼み込み、貸布団で本堂に寝てもらった、という。娘さんは有力な踊り手。今朝午前4時半まで踊り、仮眠をとって、いま出かけるところ。着替えも含めて、浴衣を何枚も用意しなければならない。町内会と個人負担。小一時間ご馳走になったところで町を歩く。県外観光客目当てに、呉服屋はおわら用ゆかた、薬屋は漢方薬、駐車場はにわか居酒屋といった具合。人込みは凄いが、それほど売れているわけではない。空き地にある架設トイレは長蛇の列。そういえば、Nさん宅にトイレを貸してと泣きそうになって飛び込む女の人も多い。顔を見ては、断われるわけもない。また出るごみの量は半端なものではない。

街ながしを堪能して帰ってから、ひとしきりこの祭りをどうするかで話し込んだ。

結論は3年間5億円で売ること。電通がオリンピックを独占マーケティング契約で買い切るように。ことしが25万人。まず入町料を徴収する。1000円で2億5000万だ。「おわら」「風の盆」を商標登録。無断での使用を禁止し、有料化する。ツーリストも、旅館も、宇奈月でのおわら講習も一定額を支払う。リスクもあるがこの額で十分買い手がつく。誰もが納得。

この5億円をまずおはら保存会に、トイレ整備、ごみ収集、交通規制、街並み整備などに使うというもの。オリンピックもサッカーも商業化し、大きな利権となってうごめいている。八尾町はこの期間スタジアムになると考えればいいのである。風の盆もこれくらいは許されていいのかもしれない。

この5人でYOC(八尾おはら)委員会を設立することにした。ひとり1億の出資である。銀行から借りても十分に収益が。サマランチ・コウダとなるわけよ。来年の風の盆を楽しみに。

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