リカバリー

 どこから手を付ければいいのか、途方に暮れるばかり。こんな嘆き節がわが周囲に充満している。北陸新幹線開業後の富山空港では搭乗率が約4割落ち、空港内テナントからの激しい苦情に空港ターミナルビル職員の顔がゆがむ。ディケアを運営する経営者は介護保険の切り下げとスタッフ人件費の負担増に悩み、本業であるケアの充実まで頭が回らなくなって、取り敢えずの休業を選択した。再開するために何が必要か、介護保険に頼らない事業に先駆けて取り組む東京の同業に足を運んでいる。ある労金の幹部は人員整理しか思いつかないと青ざめた顔である。組合員の住宅ローンなどは地銀のすさまじい攻勢に太刀打ちできない。みんな食うだけで精一杯、組合活動の停滞は労金の存在などにかまっておれない。JAも然り。玉ねぎ生産に活路を見出しているが、生産するのはお手の物だが売り先である。何しろ組合員に押し売りで済ませてきたのだから、営業能力が身に付くはずもない。相場にも目を配らなければならない。中国産に頼っている吉野家や、カレーのハウス食品などへのアプローチも当然となってくるが現場は戸惑うばかり。失敗は許されないというプレッシャーは心も壊れる事態ともなる。でも今更コメに戻れない、とにかくやるしかありませんと悲壮である。いずれも四面楚歌、孤立無援といったところだが、どうしたものか。閉塞感は想像以上といっていい。

 しかし、手をこまねいているわけにはいかない。精神療法に「リカバリー」という手法がある。できることを少しずつ積み上げていこうというもの。ヒットを飛ばさなくても、送りバンドで十分と考えることだ。ランナーとの連携や監督のサインなども必要になるのだから、周囲を巻き込んでいくことが大事ということになる。

 例えば、空港なら海外からのインバウンドで何とかならないか。免税店で富山の特産物を販売する。広いスペースを利用して搭乗までの時間を回る寿司で楽しんでもらう。また駅から15分という空港立地を生かし、駐車場無料を利点にセミナー、イベントを開催してもらうのもいい。

 ディケアだが、保険外でのサービス提供となると1時間3000円が目安となる。高齢独居でそれなりの裕福層が対象で、訪問サービスで在宅を維持していこうというもの。何かあってからでは間に合いません、徐々に慣れて在宅ひとり死に挑戦しましょうが殺し文句。病院や施設での食事を想像してください。1日3食で1500円が相場の上に、酒などは厳禁。全員が流れ作業のサービスでわがままは決して許されません。在宅ではワインにステーキ、刺身に熱燗を頼むといえば、いつでも可能となる。これまでの苦労、成功が人生最後に報われる贅沢と考えましょう。それが介護事業を救うことになるという説得術である。

 JAだが営業は退職シニアの活用はどうだろう。商社OBが最適である。これこそ高度プロ契約で、営業実費の交通費に成功報酬で十分だ。JAの若手社員が秘書となって、仕事、人脈を覚えるのである。玉ねぎの値決め交渉が厳しければ、丼のコメを抱き合わせて売るという手もある。

 さて労金だが、これだけは思い浮かばない。バングラデシュで成功を収めたグラミン銀行を思い出すが、先進国では無理だと思う。連合レベルで考えるべきだ。

 仕事というのは、どんなきっかけで好転するかわからない。好転というのは変化に対応すること。諦めずに今できることを続けることで、自然と変化し、市場の中に適応していく。袋小路に入ってもがいているのは、黒田日銀もそうだ。失うものを持たない庶民が変化を恐れてはならない。

 

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