地方の破局をこのまま見過ごすのか

小泉の聖域なき構造改革は間違いなく、地方に破局をもたらす。こう断言するのは東京大学教授・神野直彦氏。韓国でもそうであった。破綻した韓国ウオンを持ち直すためにIMFの勧告を受け入れ、構造改革に乗り出した韓国。そのひずみ、痛みは地方に集中した。ソウルだけが活況を呈し、地域間格差は開くばかりに。

神野氏とほぼ半日行動を共にした。7月19日のこと。1946年生まれの同世代。彼は教育大附属―東大経済との秀才コース。大内兵衛の門下生。研究室には大内先生の肖像画があり、「神野よ。たとえ監獄につながれるとも節をまげるな!」と厳しい視線を送っている。68‐69年と続く東大紛争が卒業の時。日産自動車にはいり人事部勤務を経て、学問への情熱絶ちがたく東大大学院へ。大阪市立大学が研究生活のスタート。竹中平蔵大臣とは何かが違う、多分人生の基本的なもの。御用学者かどうか即断は避けよう。神野は中国新橿ウイグル地区、韓国、ロシアウラジオストックなど研究依頼を受けて飛び歩く。もちろん何よりも好きなスウエーデンには年2回は行く。

お願いした講演も素晴らしく、明快そのもの。石川魚津市長も沢田滑川市長もいつになく手帳を取り出し必死にメモを走らせていた。明日の市政に反映するかな?そうであればうれしい。

地方はどうして生き延びるか。講演要旨はほぼ次の通り。日本は三全総、四全総を通じて全国的に均衡の取れた発展を目指した。高速道路、地方空港、新幹線などのインフラ整備に躍起となってやってきた。そして工場を分散立地させてきた。それが地方の雇用、消費の拡大をもたらしたことは事実である。しかし、もうそんな事が許される状況ではなくなった。グローバリズム、ボーダーレスは生産拠点をアジアへと移転させ、空洞化が現実のもとなっている。ユニクロがその象徴。この不況は19世紀末、軽工業社会の行き詰まりから20~30年も悶え苦しんだ時代と様相をまったく同じ。その時も自動車、家電製品という重化学工業の勃興をみるまではどうしようもなかったのだ。つまり技術革新によるブレークスルーを見るまではこの状態が続く。覚悟した方がよさそうだ。

人間の手足の延長が20世紀の産業であるとすると、21世紀の産業は頭脳の延長。具体的には、金融を中心としたコンピュートネットワークの新産業構造への転換。これが見えてこなくては不況脱出とはいかない。一番憂慮するのは食料問題。自給率30%で、工業製品の輸出競争力が弱くなれば、果たして食料輸入がこのまま続くとは思えない。市場にすべてゆだねよ、とする新古典派・竹中理論は危ない。

それでは解決策は。ここからが神野教授の実践的処方箋。競争社会から協力社会へ。競争、効率が強靭な社会を作るように見えても、それは人間にとってはどうか。住みいい、心地いいものとはいえない。「まず酒を止める事です。その時間を勉強に充てるのです」。スウエーデンも然り。仕事のレベルアップであれ、文化であれ、語学であれ、とにかく学ぶ事から始めれば社会は動き出し、変わります。構造改革だ、と絶叫するだけでなく、また単純になびくだけでなく、それぞれ自分の言葉で語り出すことです。

韓国との間の教科書問題も。こちらもしっかり歴史を勉強して草の根でも話し合えるようにしなければ駄目。かれらの自国の文化に対する誇りは凄いですよ。日本に対抗する誇りとするものを持っていますか。

というわけで。とにかく私だけでも宣言する。「節酒につとめ、学びます」。軽そうに聞こえたら、一度誘ってみて下さい。

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