「人間として」小田実

「体調不良を何とかしのぎながら、強引にトルコも旅して歩いて帰国したのですが、帰国後、病院で受けた検査で、体調不良は末期――またはそれに近いガンによるものであることが判明しました。英語の言い方で、「 His days are numbered 」(余命は限られている)というのがありますが、私の状態はまさにそれで、あと、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、あわよくば1年――というぐあいに考えています。検査を受けた病院は、大阪の大阪駅近くの福島の病院でしたが、福島は私が生れた場所です。今年6月2日に私は75歳になりますが――生きていればの話ですが――75年、人生を一巡してもとのところに戻ってきた感があります。」

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