どうしてこんな愚かな選択になるのだろうか。関西電力は国内最古の高浜原発1号機を再稼働させた。関電だけではとてもこんな愚挙はできない。それを背後で操る権力に「新しい戦前」を見る思いだ。この老朽原発は1974年の運転開始、定期検査で運転停止後審査に時間を要し、12年半動いていない。その50年経た原発を再稼働し、更に60年超の運転も視野に入れている。その根拠としているのが5月に成立させた「GX脱炭素電源法」。脱炭素というお題目だけの要請で、科学的根拠はない。おためごかしの論理でごり押しし、現実を動かしていくためには、中途半端な知性など必要ないと恬として恥じない。
老朽原発のリスクは、原子炉の金属疲労、コンクリートや、ケーブルの劣化はいたるところだろう。家屋やマンションにしても、ほぼ40年が建て替えの目安であり、耐震はどうか、水回り、屋根の劣化はどうかと思い悩む。そんな常識的な懸念や危機感がほとんど伝わってこない。国と電力会社のもたれあいの無責任体質が根底にある。
もうひとつの大きな問題は使用済み核燃料だ。福井県は原発プールにたまり続け、5~7年で満杯になる事態を受けて、県外移設を関電に確約させた。その解決策がフランスの再処理施設に移すことで、取り敢えずお茶を濁した。根本的な解決にはなっていないし、所詮は無理な約束。青森の再処理工場が完成すればという核燃料リサイクルという夢を語って、解決策としている。破綻は明確である。
さらに指摘しておきたいのがリニア新幹線だ。これも原発再稼働と連動している。時速500キロのリニアの消費電力は新幹線の4~5倍で、東電の柏崎、中部電の浜岡の再稼働を視野にいれている。リニアは70年に国鉄鉄道技術研究所が着手した、時代遅れの技術。大深度地下トンネルを走るが、これは用地買収が不要というカラクリで、議員立法での援護射撃だった。しかし、深度地下での事故対策、膨大な残土処理、地下水のへの影響などの課題が積み残されている。当初JR東海の全額自己負担であったのが、葛西敬之JR東海名誉会長と安倍首相が得意の密談から、3兆円の財政投融資を決め、準国家プロジェクトとした。エネルギー多消費、環境への負荷の大きさ、名古屋の経済地盤沈下でその経済性も危ない。愚かさを象徴するプロジェクトだ。
新しい戦前とは、「起きて困ることは、起きないのではないか」「起きないに違いない」そして、絶対に起きないと思い込む。そんな神風思考回路に取りつかれ、思考停止となる。期せずして第2次大戦末期に7万人以上の死者を出した史上最悪の作戦とも呼ばれるインパール作戦を思い出した。あの陸軍と変わらないレベルの政治屋とその取り巻きが、未だに檄を飛ばしている。
亡国の道を、目隠しされて、いやあの神風思考にしがみついて、進んでいるのではないか。7月30日、三上智恵監督の「沖縄、再び戦場(いくさば)へ」スピンオフ作品を見たが、その思いをさらに強くした。辺野古移設に始まり、沖縄南西諸島への陸自駐屯地開設、ミサイル配備は、思考停止の愚かなものだ。