政権交代につながる経済政策

 景気・雇用を語らなければ選挙に勝てない。こんな殺し文句に惹かれて、12月21日午前6時過ぎの北陸新幹線に飛び乗った。議員と市民が共に学ぶ連続学習会の初回で、衆議院第1議員会館大会議室が会場。午前9時から正午までの3時間の長丁場を主催するのは、「99%のための経済政策フォーラム」という市民活動の有志たち。安倍政権のスタート以来5度の国政選挙で、煮え湯を飲まされ続けてきたメンバーである。ここが正念場という思いが伝わってくる。地下鉄駅からわが世代と思しき面々が足を運んでいる。警護のものものしさに呆れながら、権威だけは保とうとする建物に抵抗を覚えつつ、会議室最前列の席を確保した。市民約230名、議員は秘書も含め20名くらいか。すべて自発的な参加者だ。

 講師は松尾匡・立命館大学教授で、左派の最優先課題は経済であると向き合い、「真っ赤に燃えるような景気拡大策を掲げろ!絶対に緊縮策を取ってはならない」と熱っぽく説く54歳の論客である。その上で安倍政権に勝てる対案とのたまうから、講師の筆頭に持って来たくなる。

 真っ先に挙げたのが新潟知事選の池田ちか子候補で、5野党の推薦を受けながら勝てなかった。経済公約は「真の豊かさを実感できる新潟」とお茶を濁す程度。当選の花角候補は「景気・雇用」を選んだ人の70%、「地域の活性化」を選んだ人の63%から得票し、逃げ切った。これらは20代から40代の若者層でもある。いわゆるロスジェネ世代で、景気雇用に敏感に反応する。一方、京都知事選では共産の推薦のみで出馬した福山和人候補は「京都府発注事業を時給1500円以上にする」「働く人・中小企業者、大企業、地域がウィンウィンで税収アップ」「地元密着型の公共事業を積極的に進める」などを挙げ、西脇候補に対し得票率44.1%と肉薄した。沖縄の玉城デニー知事も県民所得26万円アップ、最低賃金1000円、縦貫鉄軌道の実現など力強い前向きの経済公約を挙げた。小泉改革と長期不況の傷がどんなに大きかったか。ロスジェネ世代の悲しみ、苦痛を深刻にとらえなければならない。この層に訴えないと勝てない。

 安倍政権は大胆な金融緩和作戦で、この状況に大げさなプロパガンダ手法で対応してきた。特に消費税の2度の延期は、不況はもうこりごりと感じる層にアピール。ひたすら選挙のみを意識して、バラマキ批判などどこ吹く風と惜しげなくつぎ込む景気作戦に、負け続けてきたといっても過言ではない。特に、若者や、雇用が不安定な低所得層ほど恩恵を感じるようになっ、野党が政権をとって経済が不安定になることを恐れ、安倍自民党の経済政策にすがりついているという構図だ。

 この状況を覆していくには、政権を上回る景気雇用安定策を提示することである。欧米左翼を見ても、緊縮策は貧困者にますます貧困を押し付けるだけと、財政支出を拡大して、社会サービス充実と、景気刺激・雇用拡大を訴えている。緊縮策は袋小路の負の連鎖に陥るだけである。日銀の国債買い入れはデフレ期には必要不可欠で、そのカネの使途こそ問われるべきである。

 結論からいえば、左翼やリベラルのイメージが嫌われているのではない。倹約的なイメージが嫌われているのだ。逆にいえば、もっと景気のいい対案をアピールしないせいで負けているのだ。少子高齢化の抜本的な対策、働き方改革法を大胆に上回る雇用保障、医療福祉改革などで、真っ赤に燃えるような景気拡大策を掲げよう。

 熱弁は時間を忘れさせた。公的な債務はほんとうにチャラになるのか、という質問には、日銀は収支を合わせる必要はなく、出回る通貨の量をコントロールすればいいのだから、まったく心配する必要はないと断言した。その論は別にしたい。

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