「団塊は最後までヒールが似合う」

 世相を占うのに格好なのが、正月恒例になっている宝島社の企業広告。今年は標記の「団塊は最後までヒールが似合う」のコピーに、77歳の中尾みえがこれ見よがしの姿態に靴のヒールを尖らせている。そういえば、園まり、伊東ゆかりを含め三人娘と呼んだ時代があり、「シャボン玉ホリデー」は高校時代には格好の話題を提供してくれていた。放送番組も、あらゆる消費も、政治さえもこの団塊世代を意識して作られたといっていい。

 本文のコピーは続く。「かつてこんなにも疎まれながら、たくましく生きてきた世代があっただろうか。団塊は、他の世代にとって永遠のヒール=悪役だ。彼らは年を重ねてなお、他人におもねることはしない。いまだに野心でギラギラしながら、高齢化という時代の主役を張っている。団塊よ、どうか死ぬまで突っぱって生き切ってくれ。他の世代を挑発し生きてくれ。表舞台から去るのはまだ早い。ナースコールの前にカーテンコールだ。あなたたちの生き様に嫉妬をこめて、盛大な拍手をおくらせてほしい。」

 ここまで持ち上げられると気味が悪いが、届いた賀状を思い返すと、さもありなんと思う。後輩達は怖くて、変わり切れません、と怯えている。成功体験も持たない世代は、小さな障害を突破することもできず、元の振り出しにすぐ戻ってしまう。また、発想が貧弱で、スケールも小さい。いまの心境をいえば、ゆでガエルと、いつまでも付き合えないと突き放し、抜き切って、死に絶えるしかあるまい。未練はない。

 その上で、わが団塊世代に呼び掛ける。ものをぐるぐる回せ!自分のところに来たものは、貨幣でもいいし、商品でもいいし、情報や知識や技術でもいい。とにかく自分のところで止めないで次にまわす。心がけてほしいというより、これしかない。
 昨年末旧知の先輩から、電話が入った。「在宅医療をやりたい医師がいる。君の経験を話してくれないか」。もう二つ返事である。一知半解もいいところだが、10年前のUSBメモリを引っ張り出してきて、したり顔で話しかけた。77歳という年齢が持つ説得力もあるようで、すぐに動き出した。ちょい顔見世の表舞台だが、カーテンコールに手を振ることができる。恐らく最期の出番だろうが、うれしい限りである。

 飛躍するが聞いてほしい。コロナ減収世帯に特例で生活資金が貸し付けられたが、その総額は1兆4269億円に達し、1月から返済が始まっている。ところが3割以上が返済不能で、今後も返済不能が積み重なっていくことは間違いない。お札を刷って配るだけの福祉政策の貧困さの現状である。こんな時こそ、社協職員ではなく団塊の出番である。地域ごとにチームを編成して、返済不能者に今後の生業(なりわい)を含めてマッチングをやろう。カネをばらまくのではなく、生きる知恵をばらまく。そのための起業資金は年金から出してやる。持ってけ、どろぼう!そんな心意気も示していい。コミュニティで生きたカネを回し、ボランタリー小商いを回していく。富山県内で1兆4269億円の1%、142億円が配分され、その成果を全国都道府県で競い合うという手もある。

 そういえば、宝島社の企業広告初回は「おじいちゃんにもセックスを」で、詩人の田村隆一がすっくと立っていた。おじいちゃんの心意気に、私は脱いじゃう、という展開にならぬとも限らない。

 2023年の希望を語れば、こんな程度である。

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