上越市に7名の女性市議

 新潟の上越市が面白い。4月26日に行われた任期満了に伴う上越市議選だが、女性議員ゼロの市議会に7人の新人女性市議が一挙に誕生した。定数32に36人が立候補して、女性候補全員が当選し、2割強占めるという快挙である。

 上越市は71年に高田市と直江津市が合併し、05年に13町村が加わった。人口は県で3番目だが、中山間地も広く、過疎にも悩んでいる。いわば日本のどこにでもある地方の現状といっていい。ユニークなのは、合併前の地域に15の地域自治区を配していること。行政権限はない。多分、市議も地域自治区の利益代表ということで議席を確保しているのだろう。いわば、それぞれの地域事情を汲み取っていこうという配慮だが、これも一長一短。地域エゴむき出しの予算分捕り合戦に終始すれば、地域崩壊を更に進行させるだけだ。地域事情の民意が公正で、持続可能なものかどうか、優先順位を含めて、冷静な検証作業が不可欠。ホンモノの民主主義がここで問われる。それが、この7人の新人女性市議にかかっている。おっさん感覚の市議会が政務活動費の不正を招いたとの批判はその通り。多様性に富んだ議会で、創造的な議論。それしか解決の道はない。

 8月1日、「とやまの地方自治を考える会」が上越市の市議5人を招いて、勉強会を開いた。保守系の市議会会派「みらい」の所属で、女性市議3人含む5人である。冒頭10年に制定した上越市議会基本条例についての説明があった。この市議選で引退した75歳の内山米六・前市議が自ら作成したパワーポイントで、この基本条例こそ上越市議会活動の最高規範であり、首長との二元代表制のもと議事機関としての責務をはたしていかなければならないと熱っぽく語りかけた。富山市議会は政務活動費の不正で14名の議員辞職を招く結果となったが、その立て直しをどうするかが課題。この地方自治を考える会は、議会基本条例の作成、成立で立て直しを図ろうとする市民組織。だが、順調ではない。自民党市議の多くが、基本条例は必要としていないという。根底には多数派の優位さを、議論抜きでストレートに反映させたいという思惑だ。議員間の討議も、会派間の討議も面倒に過ぎない。二元代表制というが、首長は絶対有利だ。予算提出権限と職員などの人事権を占有し、ちょっとのおこぼれを議会側に渡して多数派を確保していれば問題はない。当日参加していた唯一の自民市議は「選挙民から負託された市議は自立した存在であり、議員間の討議は思いを同じくする会派で行い、要望、議案をまとめる。従って議員間で討議の必要はないし、無駄ではないか」という趣旨の発言だった。この議員は大統領的な権限を持つ首長と交渉をし、自らの政策実現を迫った方が現実的と考えている。少数派を相手にしていても、埒が明かないというわけ。地方議会で多数を握る自民系議員に通底する。

 上越女性議員の自己紹介は楽しかった。「ケアマネをやっていたが癌を発病、もらった命と出馬し、選挙運動もできる範囲で当選したのが不思議」「消防士だったが、別の視点から防災救急を見たら、どう改善啓発できるか。軽い気持ちで出馬した」「ALT(外国語指導助手)をやっていて、同僚の米国人と結婚。内山市議の後継者として出馬し、高位当選となった」。この多様性を寛容に受け入れるかどうか。富山市の自民系市議に問われている。

 上越市にはいろいろと思い出がある。ゼネコンに勤める長男一家が06年から数年住み、長女が生まれ、その子が生後間もなく川崎病に罹り、サポートに長逗留した。2歳になる長男の世話をするのが役目で、こどもセンターで遊ばせることができて、住みやすい街だという印象が強い。

© 2024 ゆずりは通信