「ブルーノート」でカウントダウン

12月31日。思いがけない大晦日となった。わが次男の演出。東京南青山にある名門ジャズクラブ「ブルーノート」でのカウントダウン。正月は東京で過ごすと決めていた。三男の全国高校サッカー選手権出場に合わせて、いわば天恵のプレゼント。うち揃って応援に駆けつけろと檄を飛ばすも、長男は北海道でスキーとかで呼応せず、次男だけがしぶしぶと応じてくれた。そして、わが注文が東京でジャズを聞きたい。彼は耳を疑ったらしい。「演歌ではないのか」「馬鹿野郎。ジャズだ、ジャズ」。我ながら何という軽佻浮薄。たまたま誘われて富山のコットンクラブなるジャズ店のコンサートに出かけたのが旧朧の22日。ジミー・スミスなる老ドラマーにいたく感激してしまった。にわかジャズフアンである。

場所を聞くと根津美術館の隣。開演は午後9時ながら6時半から受け付けるという。表参道駅から歩くと、閑静でオシャレな街路は聞いたようなファッションブランドの店が続く。ニューヨークのブルーノートにならって1988年のオープン。地下への入り口は30歳台の二人連れから中年夫婦連れが列を。正装もあるが、ジャンパー、セーター姿も。代金はひとり1万1千円。入手困難なところを、たまたまキャンセルが出たというラッキーチケット。料金にはけちを付けるつもりはない。最後尾ではないが受付ナンバーは118。ということはざっと300人のスペース。不釣り合いな父子が約1時間待って、更に地下へ。残り少ないながらも、割といい席が。滅多にない機会とシャンパンを注文。次男は腹が減っているとかいって、相席のテーブルに並びきらないほどの料理を。更にワインも。

総勢20人か。巨星ディジーを慕う大物ジャズ・プレイヤーが集結!ジャズ・オールスター・ビッグバンド。これはパンフの謳い文句。司会をするのはトランペットのジョン・ファディス。ボーカルもできるというだけに、軽妙な司会。もちろん英語。平均は70歳に届くかという布陣。最高齢80歳のサックスが心地よかった。トランペットソロも、リズム感がまったくないといわれる体が自然にスイングし出すのである。これはわがDNAにかすかに残るアフリカ大地ゆかりのものを、揺さぶり起こしているのではないかとさえ思った。2時間余りが瞬く間に過ぎた。この空間にしてこの時間。2001年を送るに最高の演出であった。父子ふたり。その余韻をひきずりながら、表参道を昇り、明治神宮に詣でた。といっても本殿ではなく、余りの人込みに境内を巡って、原宿から代々木へ抜けただけである。

「親父よ。もう疲れた。俺はアパートへ帰る」「冷たい奴だな」。ホテルから出ていったのが元日の正午過ぎ。父と息子の距離感。男という動物も厄介だなと思いつつ、会話とは裏腹に内心なかなかにいい距離だな、と満たされている。

そういえば富山にも「ブルーノート」があった。30年以上前だ。一番町の現在の41号線沿い。マスターは確か榊原某。数度はいった記憶がある。常連だけが通じる会話でなじめなかった。

みなさん あけましておめでとうございます。本年もよろしく。

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