「通販生活」

部屋のほこりを気にしない。そう自らにいい聞かせる生活だが、この掃除機があればと思わせるものが目に入った。マキタのターボ。ターボ機能付きで、連続30分使用のマキタのコードレス機は小社でしか入手できません。まして高橋源一郎が、手がひとりでに動いて一瞬で吸い終わっている、とまで推奨しているのを見ると注文せざるを得ない。この小社は何あろう「通販生活」である。その読者が選ぶ暮しの道具ベスト1位に入っている。思い込みの激しい高齢者特有の消費行動でもある。
 1月18日砺波で時間があったのでブックスなかだ砺波店に入ってうろうろしていると、その通販生活が存在感を持って飛び込んできた。春号とあるが年間3回発行。180円にしてはずっしりとくる。手にしたのは初めて。目に入らなかったのは、安くて重いから、本屋には歓迎されない雑誌なのであろう。おーと思ったのは「巨大地震はいつ来るかわからない、原発ゼロ今すぐ」のコピーが題名の上にある。原発ゼロを誰はばかることなく主張している企業は城南信用金庫と通販生活を発行しているカタログハウスくらいだろう。不買運動くらいでも動じないのだ。
 こんな通販生活のエピソードを紹介しておきたい。昨年5月に発刊された夏号で「自民党支持の読者の皆さん、今回ばかりは野党に一票、考えていただけませんか」の特集を組んだ。カタログ雑誌の分際でということもあったのだろう、172人の読者から痛烈な批判が届いた。「政治的記事を載せている」「両論併記をしていない」「通販生活は左翼雑誌になったのか」。これらの批判をそのまま掲載し、その上で「編集部からの答え」はこうです、と小気味のいい啖呵を切った。左翼雑誌という批判に対して「戦争、まっぴら御免。原発、まっぴら御免。言論圧力、まっぴら御免。沖縄差別、まっぴら御免。通販生活の政治的主張は、ざっとこんなところですが、こんな『まっぴら』を左翼だとおっしゃるなら、左翼でけっこうです」。「買い物は平和じゃなければできない。買い物雑誌こそ平和であるべきだ」との理念である。
 暮しの手帖と似ているといえば似ているが、向こうが正統ならばこちらは異端という感じで、男っぽい。多分、創業の斉藤駿は団塊世代前の全共闘世代の75歳前後で、無頼でシャイな面白い男だろうと想像する。社民党に多額の政治献金をしているというが、何となくわかる。カネをまわす小商いをやって、反権力のリベラル。生業は限定されるが、度胸と才覚で渡り歩いていくというのは理想である。その理想に近い男なのは間違いない。
 タブーをタブーとしないといえば、天皇退位問題も同様である。静かに論を進めたいというが、誰も寝た子を起こしてくれるなという恫喝にも聞こえる。この問題でズバリいっているのは上野千鶴子だ。主権在民をとなえるなら、共和制にすべきです。生身の人間を象徴とするのはいかにも不自然、プライバシーもなく、退位に自由もありません。いつまでこんな人権無視を続けるのでしょうか。叙勲制度は、天皇との距離で人の間に序列をつけたものです。天皇の政治利用でなくて何でしょう。本質を突く正論で吐いている。(日本経済新聞16年11月17日「憲法と私」)。通販生活この号でも、ひとりでも在宅の持論を介護対談で述べている。
 はてさて、通常国会が始まったが、通販生活という紙つぶてで立ち向かうことがあっていい。通販生活でもさりげなく特集している、小泉純一郎の「原発を選挙の争点にすれば自民党は負けますよ」の前哨戦である。

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