神様ひとつだけ。お願い

この世に夢をかなえてくれる神様がいるなら一つだけお願いしたいことがあります。小学校2年生になる息子の頭の中をのぞいてみたいのです。世の中がどんなふうに見えているのか。とても気になります。 息子に聞きたいことも山ほどあります。学校のこと、家族のこと。そして自分が障害児であることに気づいているのかどうか。それからやっぱり、お母さんのこと。 息子は情緒が不安定のとき、体中のエネルギーをつかいはたしてしまうほど大泣き、大暴れします。必死に気持ちを読み取ろうと頑張ってみても、母親の私ですら息子の心の中に入れないときもあります。「障害児の母でよかった」なんて一度も思ったことはありません。でも、だからといって、「息子を健常児にしてください」とは決していいません。だって、今ここにいる息子のこと、可愛くて可愛くて仕方がないんです。 神さま、もし夢がかない、一言だけのメッセージが許されるなら、「サンキュー、だいき!」。そう伝えてくださいね。

 これは毎日新聞7月9日付け朝刊に「女の気持ち」に掲載されたもの。尼崎市・畑中淑子さんの投稿。48歳、主婦。堂々と名乗る。素晴らしい。匿名希望が多い中で、何らひるむことない。こんな人がいるのである。 これを読むつもりではなく、同じ面の雪印乳業の創始者、黒沢酉蔵翁の記事が眼に止まり読み終えた時に目に入った。黒沢翁は1885年生まれの正義と熱血の人。若き日キリスト教に入信、足尾鉱毒事件で入獄の経験があり、日本酪農の父・宇都宮仙太郎につき雪印の前身、北海道製酪販売組合を設立している。「健康の秘訣は牛乳とチーズ」といってコメを食べなかった。そして雪印よ、即刻一から出直せ、と締めくくっている。 畑中さんに比べて、雪印なるものの何という貧しさ。そして恐らく、日本中が雪印的体質を身に付けてしまっているのでは。私はもちろんのこと、あなたも。批判できるのは「畑中さん」だけ。そんな気がしてなりません。

神さま、ひとつだけお願いがあります。一から出直す勇気を、私を含めてできるだけ日本の多くの人に。

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