アジアから見る日本

 香港、台湾、北朝鮮に対して中国はどう動くのであろうか。中国の強大化と強権化がトランプ・リスクと相まって、世界中を大きな不安に陥れている。04年11月寺島実郎の講演を聞いて、初めて中国の台頭に驚いた。津軽海峡を引きも切らず往来する北米と中国を結ぶ貨物船を挙げながら「大中華圏」と題してブログにまとめた記憶がよみがえった。その時の中国のGDPは日本の約4割、それが10年に日本を追い越し、18年には3倍になる。そして20年後には6倍にも差が開くという予測である。成長の余りの速さに、日本の多くは的確に認識できていない。中国の留学生が「日本に来て21世紀から20世紀に逆戻りした感じがする」とつぶやき、デジタル化の遅れを皮肉っている。中国のITをけん引するアリババとテンセントは、米国ビッグ5のフェイスブック、アップル、グーグル、アマゾン、マイクロソフトの背中を捕えようとしている。この経済力を背景に習近平政権は長期独裁をもくろみ、周辺諸国に強権的な圧力を加え続けている。

 97年の返還から20年経た香港は、一国二制度とは程遠く、14年の民主化を目指す「雨傘運動」は圧殺され、16年の選挙では香港独立、民主化を主張する議員の立候補を認めず、当選した民主派議員2名を公職資格はく奪とした。締め付けは一層加速する勢いである。

 この状況を傍らで見ている台湾の蔡英文政権は、対中国融和路線を進めた馬英九政権から16年5月にその転換を求めて成立したが苦境に立たされている。台湾から本土への投資は香港、シンガポールに次ぐ3位であったが5位に後退し、中国での事業売却を迫られるケースも出ている。一方で台湾と外交関係を持つ国に圧力をかけ、オセロゲームのようにひっくり返し、公式外交を持つ国は20か国にまで減り続けている。本土からの来訪も5割以上激減し、観光産業に大打撃を与えている。蔡英文も打つ手に窮して苦悩が続く。

 そして注視すべきは、北朝鮮関係の急速な緊張である。後継問題を巡り、金正男を擁立しようとした張成沢を粛清されたのが13年12月。これを中国が後押ししたと見る北朝鮮は猛反発して冷え込んでしまった。その後の中国の北朝鮮への圧力はすさまじく、米朝の軍事衝突前に中国が北朝鮮に軍事介入するのではないかと観測されている。平昌五輪を機に南北融和と米朝直接会談シナリオが進行しているが、米国主導での半島統一をこのまま座視していいのかという中国の懸念ともいえる。米中とのバランスに苦慮する金正恩と文在寅の心中は想像に難くない。

 そこで問われてくるのが日本の覚悟である。香港、台湾、北朝鮮、韓国の苦悩のらち外にいる感覚で、まるで米国に国民の運命を預託し、中国封じ込めと北朝鮮の圧力を主張するだけの偏狭さでいいのか。拉致被害者の救済を米朝首脳会談と聞くや、恥も外聞もなく、トランプ政権に頼み込む。それでこれらの国々から相手にされるのだろうか。アジアの中でひとりぽつんと孤立している姿が見えてくる。日本こそアジアにおける平和と民主主義のリーダーと呼ばれる日を何としても実現したい。

 さて、希望といえば、アメリカの銃乱射事件を受けて、高校生が呼びかけた「私たちの命のための行進」である。3月24日のワシントンでは約80万人が参加したという。エマ・ゴンザレス(17)は「6分20秒間で17人の友人が奪われた」と話し、まっすぐ前を見つめ「誰かに任せる前に、命のために闘おう」と訴えた。日本の若者も「文部省はもういらない。未来のためにまっすぐ進める教育を自分たちで考える」と訴えてほしい。参照/「世界」4月号 寺島実郎「脳力のレッスン」

© 2021 ゆずりは通信