本の未来を探す旅

書店の危機は韓国・ソウルでも同じらしい。ところがソウルでは逆境を逆手に取るように空前の独立書店ブームが起きている。詩人が経営する詩集専門店、猫好きによる猫の本の専門店など「独立書店」と呼ばれる個人経営の書店が週1店のペースで増え、その数は150を超えるという。7月5日都内で、そんなソウルの書店主3人を招いてトークイベント「本の未来を探す旅」が開かれた(日本経済新聞7月22日朝刊)。
 例えばこんな本屋だ。カウンセリング形式で客と1時間話し、1週間後にその人にふさわしい本を手紙を添えて送るという前代未聞の<本の無い書店>。「本はどこで買っても同じ商品。客は本を買う体験を求めている」というコンセプトを実行。ビールが飲める書店もある。韓国の出版業界は一度滅びたが、持ち前の実験精神と機敏な実行力で多様性の中に活路を見出そうとしている。まだどうなるかわからないが挑戦してみないと始まらない。
 さて、わが試みの「昭和20年生まれの読書漂流」トークイベントは7月21日、文苑堂富山豊田店の多目的室で開いた。定員20名のところ15名が集まってくれた。ありがたい。切り出しが「出版界の危機と本屋のの消滅危機」ということで、文苑堂のスタッフ2人がオブザーバーでこの部分のみを聞いてくれた。日々本の出し入れをしながら、思う以上に伸びない売り上げに苦慮しているはずである。流通の川上である出版社は自転車操業よろしく本を出し続ける。あふれかえる新刊はとにかく取次から書店に否応なく押し出される。書店側は取り敢えず書棚に並べざるを得ない。いやひょっとしてそのまま返品されているかもしれない。仕入れに責任のない委託販売のマイナス面だ。09年の返品率は約40%というが、現状はこのレベルで済んでいるはずがない。買い取り制などというが、目利きで仕入れができる店員などそうはいない。店を持たないアマゾンの有利さの前に為す術がない。身動きが取れない大型書店は赤字を流し続けるだけとなる。トーハンと日販はリストラ策を断行するだろう。こんな構造的危機の前に、トークイベントなど大海の一滴の試みであるが、さりながらの思いで語らしてもらった。
 本との本格的な出会いは大学入学時だ。何も知らない、わからない自分を何とかしたいというもがきであった。わからない阿部次郎の「三太郎の日記」を苦行のようにしてページを繰っていた。朝日ジャーナル連載の高橋和巳の「邪宗門」を辞書を引き、ノートに書き写して読んでいた。馬齢を振り返ると、人生の節目節目で本の方から飛び込んで来てくれたように感じる。本屋が無ければどうなっていただろうか。暁烏敏をモデルにしたという石和鷹の「地獄は一定 すみかぞかし」に出会えなければ、清沢満之の「絶対他力の大道」にたどり着けず、連れ合いを喪くして途方に暮れる50代は乗り切れなかった。これだけははっきりといい切れる。書棚を見れば、どの本にもそんな回想がよどみなくよみがえってくる。
 大型書店の危機に、現実的な解決策は果たしてあるのだろうか。ちょっと話してみた。大型書店に限り入場料を取ったらどうか。駐車場も無料なので、30分100円として入店時にタイムカードを渡し、出店時に精算する。1000円買うと30分無料、2000円で1時間無料。行き場所の無い老人が毎日のように立ち読みにくるらしいが、このくらいなら払ってもばちはあたるまい。もうひとつはこうだ。自分で書店をやってみたいという人に書棚をレンタルするのはどうか。佐藤さんの本棚ですと明示して、毎月今月の推薦本トークイベントをやる。書店取り分22%の半分は佐藤さんのものとする。また古書販売許可もとり、佐藤さんの不用本も300円とかで売り出す。もちろん書棚のレンタル料1月1万円くらい払うということだ。地域を巻き込んだ生き残り策を模索すべきだろう。

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