「死の棘」「狂うひと」
2020/7/18
思いやりの深かった妻ミホが、夫トシオの日記でその不倫を盗み読みして、突然神経に異常を来たし、狂気のとりことなって、憑かれたように夫の過去をあばきたてる妻に変り果てる。平手打ちも飛ぶ。ひたすら詫び、許 ...
「蒼龍の系譜」
2020/7/7
幕末の混乱期に生きていたら、どうだろうか。多分、尊王攘夷にかぶれているから、生き永らえることはなかったろう。幕末の1864年、加賀藩が京都での異変に対して行った処刑は勤王派40数名を、生胴(胴を切る ...
「国家が破産する日」
2020/6/28
韓国映画の強さが際立ってきている。歴史の現実に、こんな解決方法もあったのでは、と切り込む鋭さだ。1997年11月、アジア通貨危機が韓国に襲いかかる。為替の暴騰と株の暴落は、企業に致命的な打撃を与え、 ...
「土と内臓」
2020/6/14
翻訳本だが、題名をどうするかは売れ行きを決定的に左右する。原題「The Hidden Half of Nature」を「土と内臓―微生物がつくる世界」とした築地書館スタッフのセンスを称賛したい。「隠 ...
パスポートの記憶
2020/6/5
戦後生まれの引揚者にとって、海外は夢の夢であった。高校2年の時にAFS(アメリカンフィールドサービス)で同期生4人が米国留学を果たした時は、たまげてしまった。4人とも付属中学出身ということもあり、秘 ...
「雇用なしで生きる」
2020/5/30
これからどうなる。これからどうする。コロナはそう迫っている。「希望は戦争」といい放った非正規のフリーライター・赤木智弘を思い起こす。戦争が起きれば、既存の価値観がなくなって、非正規も正規もチャラにな ...
精神科医 野田正彰
2020/5/14
人間の精神とは何か。心に置き換えてもいい。どこに存在して、どうやって反応するのか。その精神が病んだ時に、精神科医はどんな兆候を察知して、いかなるエビデンスで治療法を決めているのか。内科医の武器は聴診 ...
「食と農」からの再生。藤原辰史
2020/5/3
新しい若い知性が現れた。農業史研究という変わり種の44歳。鋭く切り込む感性が初々しい。京都大学人文科学研究所の藤原辰史・准教授。朝日新聞(4月26日)で、新型コロナで啖呵を切っている。「すべての資質 ...
「生涯編集者」
2020/4/21
何が幸せか。福沢諭吉を持ち出すまでもなく、生涯を貫く仕事を持つことに尽きる。編集者というのは、作家の発掘育成から、作品の着想や助言など作家以上の能力が求められる。また雑誌をどんな企画で、どんな書き手 ...
「声なき人々の戦後史」
2020/4/12
お前にできるか。就職して間もなくだったが鎌田慧の「自動車絶望工場」を読んで思わず、こう思った。鎌田は34歳の時、ルポライターでやっていくと決めたが、家族を抱え、取材費もなく身動きが取れない状況に追い ...