景気回復の妙手

「家を売ろうとしても売れない。土地はともかく建物はまったく評価されない、それどころか更地にするための解体費用がかさむためマイナスの評価だ。戦後まもなくの持ち家推進策は役割を終わっているのに、それを今でも続けている。その結果が4400万家計に対し、5020万戸が存在するという過剰供給。したがって中古の家は流通せず、隣の人に二束三文で譲るだけ。家の資産価値がゼロの現実を、ただ呆然と受け入れるだけの無気力症候群。デフレだから仕方がない、と一言。新築世代も数十年後同じことを繰り返そうとしている。これを変えようというのが構造改革。まず税制を持ち家推進から、売買優遇へ変える。耐久性の高い住宅にして、骨格をしっかりさせ、メンテナンスを充実、部屋の増改築もし易いものにする。こうした構造改革、規制緩和を実施することで、人々は老後の安心を手に入れることが出来るうえに、住宅市場も活性化する。生活産業を奮い立たせ、新たな需要を巻き起こすのです。」

小泉改革のプロパガンダ役を担う島田節が冴える。しかしなかなかに理屈どおりに動かない現実への苛立ちと、少なからず自信喪失が表情から垣間見える。

住宅、介護福祉、医療などの生活産業を創出して、雇用530万人を生み出すという島田晴雄慶応大学教授。内閣府特命顧問でもある。6月21日富山で講演、という連絡を受けて出かけた。会場はとやま自遊館。何と見渡して60人余り。「こんなに少ないんですか。もったいない」と声をかけると、「いえ、映像での中継講演会なんです」。騙された思いもしないではなかったが、帰るまでもなかろうとスクリーンに眼をやった。これまでに3度ばかり講演をお願いしている。とにかく忙しい人というより、むしろ忙しいのが好きな人だ。一度は帝国ホテルで朝7時半であれば時間が取れる、という。パワー・ブレックファーストという朝食をしながらの会議である。その前なら、とのこと。早朝の打ち合わせとなったが、それでも携帯電話が次々に入る。

彼のいう住宅政策の転換もその通りだし、またタクシー政策の転換もうなずける。いまお母さんたちが高校生の送迎に忙しい。バスの定期代がバカ高いうえに便数も不便なのだ。そして高齢者の運転。危険極まりないが、買い物、病院通いには欠かせない。一方タクシー業界の不振は眼を覆うばかりだ。このように需要と供給が全くマッチしていない。金沢で値下げをしたタクシー会社が破産したという。島田教授の解決策は、予約会員制で料金時間制タクシー。病院の薬受け取り、買い物などのコンシェルジェサービスもこなす。このシステムを、ITを使って活用するというもの。需要を創りだす仕組みを作ってから動くのが鉄則。これは小泉総理が直ちに国土交通省に指示、実施のための予算がついたという。

確かに潜在的な需要は数え切れない。しかし誰も踏み出さない。タクシー業界も然り。じっくりと茹で上がるカエルであり、中国の瀋陽領事館の職員と同じなのである。みんな様子見だ。リスクを負わない公務員、学者、マスコミがやいのやいのとけしかけているだけ。残念ながら1億総抵抗勢力なのである。やはり外圧でしか動かない人たちなのである。私もあなたも同罪。

そこで荒療治だ。140兆円とかいう個人金融資産。これを5年間で使い切る法案を提出する。5年後に円を廃止し、日韓共同通貨「フィファ」を導入する。これを導入しないと世界サッカー界からボイコットするという最後通告。円からフィファへの切り替えは1人200万円まで。残りは使い切るしか道はない。これが一番の策。景気回復は間違いない。どうだろうか。

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