生きのびよ!若者達

「亡父(ちち)に似て酒が好きです」賀状来る(拙句)。亡くなった友人・林宏君の息子からの賀状を題材に詠んでみた。父に似て酒は強く、毎日おいしく飲んでいます。機会があれば飲みましょう、とある。ことし最もうれしい賀状だ。35歳前後であろうか。愛知県一宮市とあるから、北陸東海自動車道の7月開通を待てば、老人の運転能力でも大丈夫である。同士を募って繰り出す企画を立てねばなるまい。自分の息子とのコミュニケーションは微妙なすれ違いがあり、苦が手な部分がある。ところが、友人の子供となると、俄然楽しく、弾んでくるから不思議なものだ。助言も、励ましも、的確にできているようで、どうしてお前に話せるのかな、と感謝されたこともある。それが遺児となれば、格別である。こんな“オヤジ”だったんだぞ、と語ってやりたい。彼のこれからの人生に、確実に勇気を与えるに違いない。生き残った者だけにできること、そんな思いだ。
 亡き林宏はこんな男だった。寅さんのように惚れっぽい。居ても立ってもいられないで、自転車を駆って彼女の家の周りを徘徊する。数学に対する集中力は桁外れで、一晩考えて翌日に、こんな解き方が見つかったぞ、と得意げに話す。月刊「大学への数学」を愛読していた。無類の野球好きでもあった。野球部ではないが、なぜかその周辺にいつもいた。今春の選抜で、中部高校が21世紀枠で出場を決めていれば、真っ先に伝えたい男といっていい。そして、こよなく日本酒を愛した。それも寿司屋で、とり貝、赤貝、青柳には目がなかった。胃がんで胃を全摘し、肺にも転移していて、腸閉塞も繰り返し、浜松で逝ったのが、13~14年前。くっきりと富士山が見えた春先であった。がんの遠因は就職でのミスマッチだ。住友建設に籍を置いたのだが、職種も、大組織にも向いていなかった。我らが世代はひたすら適応しようとする。疑問に思うことさえ、負けることと思っていた。真面目さに比例して、ストレスが加速する働き方といっていい。レースから降りられない、そんな愚かな呪縛に命が絡めとられたのだ。
 さて、難問ながら今回のテーマ「新しい働き方」だ。「古い職業」「既得権益にしがみつく組織」に生きてきた旧世代人間にはとても無理というもの。格好の指南書を紹介したい。「ウェブ時代をゆく」(ちくま新書 740円)だ。60年生まれの梅田望夫が、その行間から誠実さをあふれさせて、さまよえる若者達に訴えている。
 開かれたネット社会を、持たざる者の武器として挑戦しろ、そこに「新しい職業」がある。グーグルを例に引きながら、それを「もうひとつの地球」と呼んでいる。広告収入×チープ革命×群集の叡智×組織の情報発信、で成立している。旧世代にはチンプンカンプンだろうが、わがイムニタスマスクはグーグルアドワーズで愁眉を拓いた。この公式のすべてが当てはまる。「新しい職業」を信じる根拠だ。もちろんその前に、好きであること、自分に向いていることだが、強い自助の精神と、いささか反対のイメージだが「病的なまでの心配性」も必要な資質として挙げる。そこは不安定だが、自由で、生き易い。だから、自発的な力が湧き、継続したエネルギーとなる。このオプティミズム(楽観)を確保すれば、「好きを貫く」生き方と、現実世界と折り合いをつけて「飯を食う」ことが両立する、というもの。
 こんなことを信じるのも、実は正月に遊びに来た息子の友人の中にいたのだ。「おじちゃん、吉祥寺にある小さなソフト会社だが、マイクロソフトと提携しているのだ。毎日が楽しくてしようがない」。2年前に渋谷で飲んだ時の自信のなさそうな表情からは想像できない笑顔だった。若者達にぜひ読んでほしい。そして、肝に銘じておきたいのは、年寄りはダメな世界で頑張るということ。
 ところで、新しいバナー広告が右下についた。うたごえ倶楽部の参加者募集だが、ポイントは富山出身のバリトン歌手・竹内雅挙君。新湊・引揚者住宅の一角にあった託児所時代の友人・竹内(旧姓・浅田)清美さんの長男である。心ある人は参加してほしい。

© 2021 ゆずりは通信