一周遅れでちょうどいい

21歳の店長が経営?する焼肉店がある。彼は調理の専門学校に在学していた時に、この店でアルバイトを始めた。「ちゃらんぽらんのバイトだったんですけど、その時の店長に厳しく仕事を仕込まれました。お客さんとは何か、仕事とは何か。はじめて真剣に叱られたのです」。そして「お前、ここの店長をやってみんか」と誘われ、「やらしてください」。全国チェーン百数十店ある中でカリスマ店長といわれるのが数人いる。目標はそれである。昨夜も店が終わってから、接客方法をバイトの連中と朝方までやっていた。すべての時間をこの店に捧げている。

ご存じ炭火焼肉酒家「牛角」。社名はレインズインターナショナル。本社は六本木ヒルズ森ビル。フランチャイズチェーンの成長の鍵は、どれだけスピードを上げて全国展開できるか。やる気があって、知名度の高い地方企業と組めるか。エリア担当の別会社がそれをきめ細かくやっている。感動経営が理念という。高校生の部活の乗りである。教育システムの基本もそこにある。やる気がないと続けられないシステム。そういえば愛用の寿司屋もこぼしていた。郊外のチェーン店に食われている。平均年齢20歳前後の人件費、大量規格品の素材、店舗。これでは敵うわけがない。本当にそれでいいのか、だ。

ここのオーナー(加盟店)がいっている。20歳前後のバイトから店長にさせ、更に貢献した奴を30歳過ぎて取締役にする。問題が35歳前後から、勢いだけでやってきた人間はそこでストップしてしまう。その後の処遇で頭が痛いという。人間の賞味期限切れである。

資本の論理と人間の論理のすれ違い。グローバルとローカル、先進国と途上国、老人と若年、適応する奴と適応できない奴。そうして選別が進んでいく。「行き着く先はどうか、ああ茫茫」というのが、これまでの行き詰まりの詠嘆であった。歳の暮れである、これを超えよう。

今年1年の収穫は、一周遅れの正解があるということ。結婚できなかったといっていたわが同級生の女性が、みんな子どもが巣立ち、旦那が死に、未亡人になって同じ列に加わってきたという。今度は女同士で海外旅行を楽しむと張り切っている。そうなのである。選別に負けたからといって、嘆くことはない。武富士で汗を流して頑張ることはない、のである。カリスマ店長になれなくても大丈夫。みんないつかは同じ列に加わってくる。

そして、いいたい。経営者の皆さんよ、数値目標だけをあげるのはよくない。何の根拠もない期待値に振り回されるだけである。そんなことなら誰でもできる。いい経営者は数値を追わない,追わせない。気がついたら目標数値を超えていた、が経営の極意である。数値は腹に納めよ、そのくらいの才覚と度量を持ち合わせよ、ということ。

さて、今日12月28日は恒例の餅つきである。この搗き立ての餅を持参して、孫の待つ浦和に行くことになっている。年末に長男夫婦が、転勤で秋田から浦和へ居を移した。ちょっとは近くなったらしい。

最後に、新潟県の小池清彦加茂市長がイラク派兵反対の声をあげている。この人は東大を出て防衛庁に入り、防衛庁教育訓練局長を務めている。今いちど、八月十五日の原点に戻れ、自衛隊の使命は国土防衛、敷島の大和心を人問はばイラク派兵はせじと答えよ、と叫んでいる。教育基本法の改正とあいまって、徴兵制も現実味を帯びてきている。

みなさん、どうかいいお年を。一年のお付き合いに感謝。

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