生来の怠け者と自認しているが、プール通いだけは欠かすことはない。ひとり住まいになってからは特に銭湯代わりに通っている。空港そばの県総合体育センターの年会員で、市民プールをサブに使っている。いずれも50メートルで、水質管理が行き届いている。15年は続いているだろうか。ひとつ気になっていたのが県と市の施設であること。午後8時終了だが、午後7時半に蛍の光が放送される。初めて聞いた時は急にクロールの手が早くなり、ペースが狂ってしまった。顔は笑顔だが、本質的にはやはり官営で、トラブルが発生すると「税金で使わせてやっている」という本性が出てしまう。そんな思いでいるところに、激戦の金沢フィットネス業界で、異彩を放っている経営者に出会った。
吉田正弘さん、71歳。54歳のときに銀行を脱サラしてフィットネスクラブを創業した。17年経過して2ヵ所の経営というとゆっくりかもしれないが、売上高10億円、経常利益2億円である。来年5月には13億円かけた3ヵ所目がオープンする。
彼のフィットネスクラブ北陸版ビジネスモデルを紹介しよう。一ヵ所の投下資金10億円、敷地(借地)はロードサイドの3、000坪、延べ床面積は1、000坪でプール、ジム、スタジオなど施設スペース60%、会員5、000名、年間売上5億円、経常利益1億5000万円、経費配分は人件費3分の1、消耗品メンテナンス費3分の1、地代償却費3分の1。特にメンテナンス費用は惜しまない。もちろんこれだけで経営ができるわけがない。
会員ビジネスの難しさは会員の出入りが激しいこと。月に3%あるというから、年間では3割が入れ代わる。絶えず新規会員を流入させることがポイント。会員のやる気を支える優秀なトレーナーの存在は不可欠。加えて医師ともメディカル面で契約している。動脈硬化改善のための有酸素運動プログラムなどがある。創業時の会員平均年齢は24歳だったが、現在は42歳。高齢化社会での健康志向が如実に出ている。見逃せないのが清潔感。器具は男女別々で色分けされている。ハードで7割決まるというのが持論で、そのために空間デザイナーと契約している。施設産業だけに莫大な投資が最初に発生し、やり直しがきかない。創業準備には2年間と4,000万円をかけた。「自信と安心が持てる」まではスタートしないと決めていたからだ。とにかく「暗黙知」がいっぱいなのである。加えて並々ならぬ企業化精神だ。今ひとつの大きな効用は、医療費の抑制に確実につながることだ。まだまだ有望分野、都会ではコンビニフィットネスが流行とも。
さて、広々とした50メートルプールをひとり泳ぐ時に、吉田社長を思う。この施設を彼に任せたらどうなるであろうか。公設民営を急がねばならない。といって最近は郵政民営化論には与していない。
11月は映画を3本見ることにしている。まず13日、富山松竹で「隠し剣 鬼の爪」。山田洋次は藤沢周平の時代劇の中に豊かな鉱脈を見つけたといっている。「たそがれ清兵衛」に次ぐ二作目だが、ちょっと物足りない感じだった。寅さんシリーズの再現なるかどうかの試金石でもある。それにしても、土曜の午後というのに中年おじさん3人は寂し過ぎた。ひとりは「遭いたい」に続いてみるからと追加料金を払っての居残り。今ひとりは駐車場チケットがないが、その料金にならないかといっている。駐車場チケットを見せると1、700円が1、000円になる。それでいいですと女の子はいうが、ちょっと引っかかった。
あとの二本の映画は「血と骨」と「ハウルの動く城」。できるだけシネコンではなく、街中でみることにしている。中央通商店街のさびれようはどうだ。日に日にひどくなっている。
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