変転極まりない世の中だが、これから世に出ようという就活生たちはどんな動きをしているのだろうか。月に1回ぐらいコメダ珈琲で待ち合わせをするが、そこに日経MJ新聞が置いてある。3月28日ちょっと早目に着いたので手の取ると、「東大出たら楽天だよね」の大見出し。つい見入ってしまった。
東大新聞の調べだが、23年度の学部卒17人が楽天に就職している。3年続けてのトップ。「公用語が英語だ」が一番大きな入社理由。入社までにTOEIC800点の取得を義務付けているので支障になることはない。次に挙げるのが、ITスキルの獲得。仕事をしながら身に着くのがいい。加えて、4~5年目で課長職と早期に管理職に昇進できるのも魅力。「外国人が7~8割のチームに配属され、上司は台湾やロシアの人。自由な雰囲気で、フレックスタイムや出社日にも寛容。会話は英語で、思い描いた環境に身が置けています」と屈託がない。激務でもいいからスキルを身に着け、外資系コンサルタント社への転職を視野に入れていて、20代のうちに成長したいという意欲が前面に出る。実力主義、上昇志向を隠さない。
一方で起業を選ぶ学生も多く、東大関連スタートアップは毎年30~40社。23年末の集計で526社にのぼっている。東大でアントレプレナーシップ教育を率いる各務茂夫教授は「大企業に自らの一生を託すのは現実的でなくなりました。社会の最先端に自らの身を置き、絶えず挑戦する方がリスクが小さいのではないでしょうか」と評する。
ところで人気1位の楽天だが、23年度決算は3394億円の赤字。しかも赤字は携帯事業の設備投資が重く連続5期連続。学生たちは楽天がどうなろうと意に介していないようだ。転職先が見つかるまでの腰掛け。社長の三木谷が路頭に迷うとしても彼の経営判断の責任。こんな割り切りもいい。新しい働き方の大きな潮流になっていくだろう。
しかし、20歳台で到達するレベルは薄っぺらい。そんなものを振りかざしてコンサルされる方はたまったものではない。時に挫折して、日雇い労働から立ち上がっていく。35歳からが人生本番でいい。
更にいえば、官僚志望が半減していること。政治主導との掛け声だけで、実際は森友加計で明らかになったように忖度の強要、内閣人事局での人事権掌握などの乱用とご都合主義。官僚といえば、もう外も歩けない佐川国税庁長官が目に浮かぶ。官僚のレベル衰退は政策立案能力の低下に他ならない。「東大出たら楽天だよね」現象の裏に潜む大きな課題である。
ところで、富山にも楽天出身の経営者がいる。十全化学の廣田社長で創業者の3代目。楽天の草創期で猛スピードで駆け抜けていく成長の現場を肌で経験している。昔リクルート、今楽天の感じだが、楽しみでもある。
人生急がないことだ。手っ取り早く手にした果実は腐りやすい。肝に銘じて、ゆっくり歩いて行こう。ところで、80歳ながらアクセンチュアで働いてみたい気がする。