立憲民主党の小川淳也が相続税の見直し増税を提唱している。世界5月号で、「滅びゆく日本、再生への道」と題して寄稿している朝日新聞OBの星浩が書いている。小川の試算によると、日本全体で年間150万人が亡くなり、死亡した人々が遺す財産の総額は70兆円に達する。そのうち相続税を払っている人は9%程度に過ぎず、その総額は3兆円程度にとどまっている。相続税の控除額や税率を見直し、10~30兆円ほどの財源を確保して、子育てや教育費などに充てるという主張である。着想が現実的で受け入れ易い。棚ぼたといっていい収入であり、この際身内ではなく広く社会貢献といえば何とか理解してもらえるだろう。
先日、相続税とは無縁と思われる友人から、うれしそうにこんな話が切り出された。5年ぐらい前だろうか友人の義弟が難病となって相談された。広い家屋にひとり住まいで、他人を寄せ付けない性格もあり、食事にも事欠く生活をしていた。もちろん無職で、亡くなった両親の資産で食いつなぎ、わが友人が何かとサポート。病気が日々進み、入浴も覚束なくなってきて、医療生協の包括支援センターに連絡し、在宅で医療と介護の支援を受けることになった。何とか乗り切っていたのだ。そして開口一番が「義弟が昨年末に亡くなりました、その節はお世話になり、ありがとうございました」。葬儀費用や家の始末など大変な重荷を抱えて悩む日々だったが、難病にもかかわらず早い時期に生命医保険の契約していた。母親がこんな事態を早くから予見していたのだろう。加えて、近所の寺院がその敷地を駐車場にしたいとの申し出。合計4000万円を超えるものが、同じ難病を患う友人の嫁さんが相続することになった。それをうれしそうに語るカネの力。どう言葉を返していいかわからなかった。そういえば、わが周囲に期せずして入った相続資金で、神奈川県戸塚の億ションを買ったり、2世代住宅を新築したりという話が聞こえてくる。
さて、この小川淳也に話を戻そう。小川の選挙活動をレポートした「香川1区密着日記」が21年に上梓されている。レポートしたのは和田静香。ライバルは自民党の平井卓也・ 初代デジタル大臣で、四国新聞のオーナーでもある。小川の選挙は家族ぐるみでやっている。たすきには「妻です」「娘です」と記されていたが、ジェンダー平等に反すると名前に切り換える経緯が面白い。選挙事務所の雰囲気が小さいところにも心配りがされていて、とてもいい。辻元清美が応援に来て「小川は思い詰めると、体壊すほど思い詰めるんですよ。国会の絶滅危惧種です。絶対に絶滅させたらダメ」こう演説して、泣かせている。
小川の増税論を支えているのが井手英策・慶大教授だが、消費税25%増税だけはいただけない。どんなにその使途が福祉に限定したものであっても、消費に大ブレーキがかかり、その混乱は庶民に塗炭の苦しみを与えるのは間違いない。アマゾンが参入するふるさと納税も、廃止に踏み切るべきだ。
白井聡のいう「アメリカという天皇のために死ねるのか?」という亡国の現実がやってきそうになっている。