突然の倒産、そして全員解雇。富山市の弁当を宅配するユニオンランチが4月30日自己破産し、全従業員140人を全員解雇とした。いろいろ辛酸を舐めてきたが、初めての経験と話す友人は75歳。失うものは何もないと県営住宅に暮らす。しかし、このまま解雇を受け入れることはできないと、急遽6人で組合を立ち上げた。
電話をした東京の全国一般労組の対応が素早かった。加えて、新潟のレインボーユニオンが駆けつけてくれた。待ち構えていたかのように、押っ取り刀とはこのこと。すぐにレインボーユニオンの分会としてスタート。この両者と3人で、会社に出向くとたまたま社長がいた。逃がすものかと、組合結成を告げ、団体交渉に応じるよう申し入れた。県庁記者クラブでの記者会見にも、同席してくれ、実に心強いサポートだった。
そんな活動の効果なのか。当初、退職金含め給料も払えないといっていたが、4月30日~5月30日の給与は支払うと破産管財人から通知があった。解雇は1か月前の予告が必要なので、30日の解雇は解雇予告で、経営はこの1か月分の給料は支払わなければならない。従業員の中にはフイリピン籍の人が10人含まれており、複雑にしているが、これも両者を頼りにしている。連合富山に電話をしたら、こんな対応をしてくれるだろうか。
昔のことを思い出した。東京新聞争議の記録「年々歳々五月の空の如く」(民衆社)。東京新聞が中日新聞に譲渡される中で、組合つぶしの不当解雇が行われ、新聞労連が全面支援した。サンケイ新聞が前年に新聞労連を脱退し、財界の新聞となった二の舞にはしたくなかったこともある。とにかく頻繁に支援集会をやり、とにかくよく集まった。新聞労連の名古屋学校とも呼ばれ、闘争の中で労働者が学んでいった。中日資本も目先が利いたのだろう。サンケイと同じなら部数は取れない、リベラルで売ろうとなった。今や東京新聞、北陸中日新聞はリベラル派に高く支持されている。
もうひとつの視点も考えてほしい。2020年施行の労働者協同組合法は、労働者が出資し、一定制約もあるが経営にも携わっていいというもの。ユニオンランチも組合で事業を継続することも可能なのだ。また、そんな意識があれば、注文が減ってきている、客がおいしくないといっているという声が、経営に注意反省を促し、こんな事態にならずに済んだかもしれない。
雇用不安、経営不安といえば、地域に大半を依存している地方鉄道、地方百貨店、地方金融機関、地方新聞社、地方テレビ局などが、人口減少の影響をもろに受けて危機に陥っている。どんな打つ手があるのか、思い切って業種業態の転換も視野に考えなければならない。しかし、どこの組合からも声が聞こえてこない。