月に1,000円、年間で12,000円、これを10年続ける同窓生が1,000人いると、基金は1億2000万円になる。このくらいのことが、わが同窓会でできないわけがない。こんな投稿が富山中部高校同窓会誌“神通会会報”に載った。投稿の主は桝田酒造4代目の桝田隆一郎君。ハーバード大学の例に触発されてのもの。10月に発行された36号である。1万8000部で、年2回の発行。次号は来年2月末となっているのだが、どういうわけか、この編集の助っ人作業が回ってきた。
15年間担当された同会事務局・太田さんの退任に伴うもので、会報編集もひとりで担ってこられた。この際だから、広報を組織化し、リニューアルを図り、同窓会活性化と会費の納付率も高めたいという源八郎会長の意向で、広報委員会がスタートした。頼まれれば引き受けてしまう、断り切れない気の弱さを呪いつつ、はてさてと思い悩んでいるが、半面楽しんでしまおうという魂胆もある。
こんな時代状況では、どんな組織でも問題点を明らかにしつつ、解決の方向が決まれば、小さなことから真剣に取り組むことだ。浮上は往々にして小さなきっかけから始まる。「着眼大局 着手小局」の実践といっていい。小さなことには、疑心暗鬼も宿りにくい。だから無心にやれるという利点もあるのだ。
さて、着眼大局着手小局だが、我田引水を恐れず語ろう。基本的なところは、団塊世代からロスジェネ世代へのエールにしたい。団塊勝ち逃げという汚名をこの際に晴らそうではないか、ということ。その媒体として、神通会会報を位置づける。したがって、積極的な情報収集、情報発信を図ることはもちろんだが、出会いの機会も増やしていきたい。その中で、次なる世代に、生き方や、ビジネスでの助言、ヒントをつかんでもらおうというもの。
その具体策として、次号トップで、育英基金構想の実現を訴える。2020年に創校100周年となるので、格好の目標だ。贖罪として月1,000円、10年継続、1000人目標は受け入れてもらえるだろう。卒業生の留学資金にしてもいいし、自立したい学生への奨学資金でもいい。変な条件は付けずに、自由に惜しげもなく使いたいものである。「施して語らず、享けて忘れず」だ。
余談となるが、思い出すのは高校生に限定したAFS(アメリカンフィールドサービス)で、同期4人がアメリカへの留学を果たしている。「え、なぜ」と思ったのを記憶しているが、そんな制度を知る由もなく、どんな経緯があったのか聞くこともなく、らち外だと思っていた。大学を卒業する頃になって、小田実の「何でも見てやろう」で、とにかくアメリカなるものをこの目で見てみたいと思うようになった。フルブライト奨学制度を知ったのもその時である。国際感覚をいつ身につけたらいいのか、そんなチャンスをどうつかむか。学生でもそうだが、社会人であっても活用できる制度があれば、もっと情報が開かれていていい。地場産業を担う自営業であっても、国際感覚が必要不可欠となっている。
不況またよし、といったのは松下幸之助だが、そんな開き直りも必要である。学校の同窓会然り、家族でも、町内会でも、地域でも、職場でも、あらゆるところで“縁のプラットホーム”ができるとすれば、不況またよしである。視点を変える、スピードを変える、生き方を変える、自らをチェンジしないでは生き残れない。そんなきっかけを作り出すのがプラットホームだ。「YES WE CAN」「YES YOU CAN」「YES I CAN」。
師走となり、そんなこんなであわただしい。一番の気がかりは、97歳の父親の食欲である。嚥下機能が落ちてきており、誤嚥に最大の注意を払わねばならない。その上での食事ということだから制約を受けるのだが、経口での食事にこだわって、その生を全うすることを選んだのである。ハーゲンダッツの一匙でも喉元を過ぎるとホッとする。
育英基金構想