画家 木下晋
2017/7/24
鉛筆で描く。といっても、軽いものではない。彼の描く眼は何かを射抜いている。彫塑、クレヨン、ペイント、油絵、墨など表現素材の変遷を重ねて、ようやく鉛筆に辿り着いた。ニューヨークの画廊600余りを、油彩画 ...
科学者たちの楽園
2017/7/24
十分な研究予算が用意され、スタッフ獲得などの人事権もある、加えて研究テーマも自由。主任研究員になると、それらのすべてが与えられる。そんな研究機関が大正時代から日本に存在した。高峰譲吉が提唱し、渋沢栄一 ...
救急精神病棟
2017/7/24
大声で、あらぬ事をわめき散らし、目を血走らせ、今にも飛びかかりそうな男が救急車で運び込まれてくる。ヘルメット姿の救急隊員が男の両脇を必死に抱え込み、引きずリ込む。付き添う家族は表情をなくしている。アル ...
紅とんぼ
2017/7/24
場末の居酒屋で、とことん呑んでみたい気分である。見知らぬ異郷で、土地の方言を聞きながら、取り留めのない話に耳を傾けたい。そこにひょいと、流しがギターを抱えて入ってくる。「いいところに来たな、おにいさん ...
極道記者
2017/7/24
麻雀と競馬、この話題についていけないと仲間から弾き出されてしまう時代があった。博才に乏しく、ここぞという勝負でのいい思い出は持っていない。それでも週日の夜は麻雀に明け暮れ、土日は競馬予想に血道を上げて ...
機先を制する
2017/7/24
深く詮索しないで聞いてほしい。暑い盛りの昼前であった。いつも利用するスーパーに、定番の豆腐、納豆、干物などを補充しようと立ち寄り、買い物籠を手にした時である。向こうから、やあ、と声を掛けながら手を挙げ ...
新・脱亜論
2017/7/24
やっかいな本である。情緒的な人だと思っていたのに、やにわにリアリズムの矢を突き立てられ、混乱の淵に追い詰められた気分で、落ち着けない。「新脱亜論」(文春新書)。著者はアジア経済学を専門とする渡辺利夫・ ...
浜口陽三・南桂子
2017/7/24
「富山から来ました」といって、閉館時間を延長してもらった。ミュゼ浜口陽三は、ヤマサ醤油の個人美術館である。人形町にある今半本店ですき焼を食べたいという愚息たちと待ち合わせたロイヤルパークホテル。ホテル ...
朝の靴音
2017/7/24
毎朝8時半頃だろうか。舎房にコツコツコツという靴音が、コンクリート床に響きわたる。いつもと違う靴音ではないか、と神経を集中させる。針が落ちても聞き逃さない、じっと息を潜めたような不気味な静寂だ。やがて ...
“友川カズキ”を贈る
2017/8/3
「ポカリポカリ生まれた命だ。カクンカクン息絶えた命だ」。ウイスキーを飲まないと歌えない男が、命をふりしぼるように叫び、ギターを撥で叩くようにかき鳴らす。しかも秋田弁である。「歯車だけで擦り切れて、立っ ...