電通、AIで提案開始

 「広告戦略、AIが提案」。料金は月100万円程度からで、利用人数や使う機能により変わる。2月9日付けの日経が報じる。年内に100社程度の受注を目指すという。眼が釘付けになった。「そんな時代になったのか」。率直な感想だ。

 50年前、毎日のように通った築地の電通ビルがそのままAIに収まったということ。つまり、千人規模で働いていた電通マンが消えてしまうことではないか。マーケティングと称して、潜在している需要を掘り起こすドラマチックな、最も人間味あふれる作業が、冷たい文字や数値からなる画面で進むことになる。どんな仕事の展開になるのか。乏しい想像だが、地方では珍しく、いち早く電通と契約して成長してきた富山の池田模範堂を例に考えてみた。あのかゆみ止めのムヒである。

 模範堂が電通のAI提案ソフトを月200万円で、利用人数10人で契約したとする。10人は商品開発メンバーだ。ムヒを後期高齢者向けに特化した商品にして、新しく販売する目標を定めた。メンバー10人はひたすら電通AIソフトに向き合う。商品名はそのままムヒでいくのか、それとも別の名がいいのか。シルバームヒなどが列挙される。単価は1500円前後とするが、販売ルートがどうか。薬局というのもハードルが高そうだ。通販はどうか。10人がそれぞれイメージしたプランを持ち寄るが、誰も積極的に説得しようという意気込みが感じられない。やはり電通からのプレゼンテーションの熱気が懐かしく、わくわくした感じが商品開発には不可欠だ、とため息交じりの嘆きが飛び交う。これを聞いたトップは、本格導入を断念した。これはAIが全くわかってない筆者の想像である。

 さて、その電通だが、25年12月期の決算で過去最高の赤字となり、配当も見送るという。海外企業を積極的に買収して、成長のきっかけをつかもうと必死だった。国内だけを相手にしていては、人口減少化でほとんど成長が見込めない。ひとり当たりの広告投資額は数年前から減少している。更に悪いことに、海外マーケットに明るくない上に、買収の資金がたっぷりある。ついつい買収する眼が甘くなる。また、国内で盤石の基盤を持つ営業手法しか知らないので、攻めのポイントを間違ってしまって、途方にくれるケースが多いのだ。つまり、海外では滅法弱い。リクルートと好対照である。高市選挙でも電通の影が見え隠れするが、そのあくどいくらいの強さが組織風土に沁み込んで、国際経営に向かない人材を輩出しているといっていいかもしれない。

 思い出されるのが「電通鬼十則」である。仕事は自分で創り出せ、難しい仕事を狙え、取り組んだら放すな、殺されても放すな、とまことしやかに話されていた。当時こんな軍隊みたいな組織で、軽やかなキャッチコピーがどうして生まれてくるのか。不思議に思ったりした。

 ほんとうにこのままAIなるものが、席巻していくのだろうか。

 

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