砺波のみなさんへ

教育勅語の教材使用を否定しない。安倍内閣は3月31日、これを閣議決定した。ここまでやるのか、ここまでやるのである。森友問題の本質は教育勅語に回帰することだったのだ。抗(あらが)うことをしない国民性というが、随分と舐められたものだ。内閣支持率が予想より落ちない、自民党支持率も同様で、この二つの指標が官邸の政治判断の目安となっている。ここまであからさまにされて、抵抗しないというのはどんな心情なのかと訝(いぶか)るばかりだが、砺波というローカルな政治情勢を踏まえて、訴える。
 砺波市議会は現在20人の議員を擁するが野党はいない。地域推薦選挙の結果でもある。砺波では在宅医療との関りで07年から15年まで親しんできたが、その中で社民党を名乗った前田喜代志・市議とは妙に波長が合った。残念ながら15年8月、61歳で亡くなったが30歳で社会党から立候補し、地域推薦なしで、しかも栴檀山というへき地出身というハンディも乗り超え、8期29年の議員活動を全うした。社青同(日本社会主義青年同盟)で活動したという回顧談も懐かしく聞かせてもらった。会う時には必ず取れ立ての野菜を持ってきてくれた。出前健診と称して特定健診やインフルエンザ接種を栴檀山農村集落センターで行った時の活躍ぶりが目に浮かぶ。しかし彼の議席を引き継ぐ者が現われなかった。
 砺波市は住みよさランキング全国3位を誇る。人口は5万を切るがそれを超える商圏を抱え、生活の利便性が評価されている。一方で、その影の部分はどうだろうか。栴檀山、栴檀野、般若といわれる庄川東地区は過疎という限界集落で、朽ち果てた家や耕作放棄地がいたるところで見受ける。都市化の割に地域住民の助け合いも、地域文化として残っているというが、地域の限られた資源の分捕り合戦という政治手法が罷り通れば、棄村棄民という事態が現実となる。日本の縮図ともいえるが、政策の選択肢も示されず、まるで見ないふりをする政治が許されていいはずがない。
 4月16日投票の砺波市議選だが、わが友人の宝田実が名乗りを挙げ、無競争は免れた。しかし、その現状だが目を覆いたくなる。定員18人を視野にいれて、模様眺めをしながら無競争で滑り込めると出馬を決めた候補者からは、何をしてくれたんだ、と怒りの声が挙がっている。それは想定の範囲だが、今回唯一野党として出馬した共産党候補との競り合いに終始するのではという危惧である。これだけ強い保守基盤の中で、ふたりの野党候補を当選させるだけの票は掘り起こせないという見立てだ。
 そこで、砺波のみなさんへのお願いです。無所属・宝田実候補と共産党・境きんご候補のふたりを当選させるようにこう考えてほしい。住みよさ全国3位の都市で野党ゼロは政治意識の後進性の表れであり、最大のリスクである。政策の選択肢が市民に提供されない。政策の透明性、評価を巡って相互批判する機能を放棄する市議会では、とても民主主義都市とはいえない。18人中2人ぐらいの野党を抱えることができない、寛容さのない都市は息が詰まるというものだ。幸いふたりは共に金沢大学の出身であり、宝田が家具製作所を、境は大門そうめん業を営み、きちんと生業を持って地域に根をおろしている。境は組織票を固め、宝田はその組織票には期待せず、浮動票を集める。浮動票とはいわば心意気の票である。したがって説得型の運動はしない。寅さん大好きが、宝田が開くジャズコンサートを楽しむぐらいの、懐の深さを見せてほしいのである。狭い地域優先から解放された伸び伸びした地方再生論議を、このふたりに期待してほしいのである。
 よろしくお願いします。

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