若者考・8月

ふたりの独身女性がわが家に泊まることになった。三男のピースボート仲間である。30代前半で、ひとりは京都に住む図書館司書、ひとりは神奈川・葉山に住む保育士。じいさんは逃げ出すしかないと1泊旅行でもと思っていたが、三男は仕事で対応できないので頼むといわれ、引き受けた。はてさてどうしたものか、と落ち着かない日々を過ごした。前日に金沢で落ち合ったふたりは列車でやってきた。わが家の風呂という手もあるが、男臭くて無理だと判断。ここは銭湯しかないと、新品のタオルと石鹸を用意して、駅から直行した。1時間後と約束して銭湯で汗を流してもらい、寿司屋にするか、家呑みかと問うと、家呑みがいいですとなり、帰途スーパーに立ち寄り、つまみを調達した。座敷に布団を並べ、クリーニングし立てのシーツとタオルケットを揃えて、ここで寝てくださいと荷物もそこに置いてもらって、食卓の準備を手伝ってもらった。6時過ぎから始めた酒宴は延々と続き、こちらからギブアップして、10時過ぎじいさんはようやくのことで2階の寝床にたどり着いた。

さて、ふたりだが自由のびのびを地で行く感じだ。しかし行く手の壁の厚さ、高さを感じてもいる。図書館の現状は厳しい。図書購入予算は削られ、正規雇用はどんどん少なくなっている。わが書棚を見て、私設の図書館を作ったらどうですかとなった。いまはやりだという。保育士の方も現在はフリーで活動をしている。規則でがんじがらめでは、子どもを抑圧するしかないので、子どもを中心とした保育システムを自分なりに考えたいという。翌日、朝食に土鍋で炊いた焦げ付きごはんを提供した。正午に富山駅で解散ということで、楽翠亭美術館を訪問し、他に客もいないのでゆっくりと楽しんだ。戦後に繊維と映画興行などで財をなした山口仙太郎邸を、現在廃棄物処理で財をなしつつあるアイザックが買い取り、好みの美術館に仕立て挙げたと説明すると、私たちにもこんなパトロンが出現しないかな、とため息をついた。

第2話であるが、親戚筋の40歳の男が富山村田製作所に転じた。日本の電子王国の落ち目を象徴している。金沢の先端大を出て、ソニーに就職した。それも石川県に初めてソニーの看板が掲げられた時である。それがジャパンディスプレイとして統合したが、生き残れなかった。終身雇用はもはやないのである。東芝もそうだが、組織病理を抱え込んでしまう企業の在り方を根本的に変えないと同じ事が何度も起きてしまう。

第3話。富山健康科学専門学校を出て、アルバイトで食いつないでいた20歳半ばの男。親の勧めで親戚筋の下請け工場に就職したが全く肌合いが合わず、うつ状態でなって出社できなくなって6か月で退社した。いまは取り敢えず石川県で鉄道保線業務についている。とにかく富山から離れたいという思いだが、いずれは自分で飲食店を持ちたいと考えている。団塊の世代が元気なうちに、呑み代を先取りしたクラウドファンディングでカネを集めろと助言している。

こんな若者たちをみていると、8月はやはり考えたい。「国家の破滅が近づいている」。福田康夫元首相が8月2日、共同通信のインタビューでこう断言した。「各省庁の中堅以上の幹部は皆、官邸(の顔色)を見て仕事をしている。恥ずかしく、国家の破滅に近づいている」というものだが、政権維持のためには、どんな汚い手でも使うアベ政権のよこしまさをいま指摘しておかねばという思いだったのだろう。この政権の後始末は大変である。北のミサイルを奇貨として日米同盟強化を叫び、防衛費の拡大を図る。デフレ脱却をこれでもかと掲げ続け、赤字国債を垂れ流す。この政策を転換していくには一時的ではあるが、みんな苦痛に耐えなければならない。後始末が大変と怯んでいては、怖い怖いといって破局に向けて進むしかない。戦前と似ているのはこのことを指している。麻薬で麻痺させられていると思った方がいい。

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