日本版「参与連帯」をぜひ

 「市民の皆さん、今戒厳軍が攻めて来ています。愛するわが兄弟、わが姉妹が戒厳軍の銃や刀で倒れています。みんなで戒厳軍と最後まで戦いましょう。私たちは光州を死守します。私たちは最後まで戦います。どうか私たちを忘れないでください」。1980年5月18日から続いた光州市民の抵抗が27日終息を迎えた時に、拠点であった道庁屋上のマイクから女性の声で放送された。光州に行こうと思った時から、この情景が思い浮かんでいた。

 5・18民衆抗争記念行事の一環として、光州YMCAで日韓市民討論会が開催された。そこに押し掛けるように参加したのだが、よい決断だった。事前配布のパンフには12人の発言要旨が載っている。オーラルヒストリーから書き起こしているわが拙論が異様にみえるが、「大変貴重なオーラルヒストリーに基づくお話しをしてくださり、深く感銘を受けました」と、金性済さんからメールをもらった。

注目していたのが、韓国NGO「参与連帯」平和軍縮センター長のイ・テホさんの論考である。実は月刊「地平」4月号掲載のレポート「参与連帯」で初めて知り、驚いていた矢先のことだった。横田伸子・関西学院大学教授によるレポートであるが、94年9月の創設で民主化運動を主導した200人余が結集し、2万余人の会員を擁している。専門知と実務知を持つ多領域の人々が結集し、制度監視、政策提案、訴訟などを実践しているシンクタンクといっていい。参加型民主主義という観点からすると、彼我の差は歴然としている。

 日本の民主主義は形式としては選挙も制度も存在し、言論の自由も保証されているが、外形的な安定とは裏腹に、市民が政治にアクセスし、監視し、制度を動かすための実質的な「参加の回路」が極めて脆弱である。

日本にも参与連帯を早急に立ち上げなくてはならない。

 さて、イ・テホの論旨を要約すると、まず挙げるのは、73年間停戦状態を継続している朝鮮戦争を終結させるための議論を今すぐ着手すべきだという。不安定で敵対的な停戦状態では、いつでも局地戦と全面戦争の火種となり得る。南北に存在する二つの国家の平和共存を制度的に裏付けられるよう法制度の改善が急務である。その前に米韓同盟が実行してきた攻撃的かつ刺激的な軍事戦略の見直しを含め、米日韓軍事協力に関する全面的な見直しも当然不可欠である。

 韓国市民社会は植民地化と分断に対する被害意識に比べ、平和・人権・気候平義などの普遍的価値のための連帯に消極的である。またイラン侵攻やパレスチナでの集団虐殺などにも目をつむり、ひたすら原油価格の急騰や株価変動にのみ反応する近視眼的な経済主義に傾倒している。

 この市民討論会の日本版が、11月に東京で開かれる。国家レベルではない、市民レベルのこうした積み重ねが信頼の持てる連帯感を作り出していけると確信できた。東京集会にも老躯に鞭打って参加するつもりだ。

 

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