「憲法と敗戦」

自民党の改憲案を英訳して米国の国務省が読んだら、これは何だ、となるのは確かだろう。G7の議長国だといってリーダー顔しているが、民主主義を全くわかっていないのではないか。開発途上国レベルの独裁と変わらない。アーミテージにこれでは米国は納得しないといわせようか。日本はあのレベルに操作させておけばいい、決して反抗しないのだから。これがホワイトハウスの結論である。
 5月2日「憲法と敗戦」と題して講演した内田樹は、まだ属国根性にすがっている政権だから、改憲も米国の意思に逆らってできるわけがないと断言する。
 そしてもうひとつ、改憲を阻むのは天皇。表立っていっていいませんが憲法を守ろうとしているのが伝わっています。天皇が、ここぞという場面で、私は憲法を守りたいといったら、その影響力は、日本の国民にとっては大きい。改憲の動きはぴたりと止まるだろう。思い出すのは園遊会の席で、棋士の内藤國男が「日本中の学校で国旗を掲げ、国歌を斉唱させることが私の仕事でございます」と話しかけたら、「やはり、強制になるということではないことが望ましい」と天皇が返した一件である。天皇は見抜いているのだ。もういいようにかつがれて国民を抑え込む勢力に加担しない。靖国神社に行かないのもその証左であり、 いま日本で最も平和を望んでいるのは天皇だといっても過言ではない。ヘイトスピーチが皇居に向けて行われるということだが、想像できるだろうか。
 ここまでの内田の結論では、憲法はアメリカと天皇が守ってくれる。染み付いた属国主義と天皇の権威にすがり続けるしかないわれわれ日本国民の姿である。またそれで朝鮮、ベトナム特需でうるおい、沖縄返還というおこぼれもいただき、これほどいいぬるま湯もあるまいとしている打算も。相当ゲスなのである。戦前は国家主権を明確過ぎるくらいに意識し、それを振りかざし、勝手な戦争をして敗北し、日本国民をどん底に落とすという間違った選択をしたのも厳然としている。そんな実質的意味の主権があったことを覚えている人は少なく、70年も他人任せにしてきたのに、今さらそういわれても人材そのものが育っていない。
 悲観論はまだ続く。世論調査を見ると、個別の政策は大反対が多いのに、安倍政権の支持率自体は高い。この矛盾は何だろう。そこで、日本人の多くがサラリーマン化していると内田は仮説を立てる。高度経済成長を経てサラリーマンが多くなり、職場のロジックに慣れ親しんだが故に、世界を株式会社と思い込んでしまっている。株式会社はトップダウンで、社長のいうことは絶対。そして、効率重視で、儲かることが正しい。という論拠で、国民は国の従業員だと、今の政権はもちろん、日本人の多くも感覚として持っている。社長の方針には不満を持つが、命令には絶対服従で、個人的意見はあるが、上のことには逆らわない。マーケットという市場が判断する。マーケットがNOを突きつければ、株主によって社長は辞めさせられる。日本の国においてのマーケットに当たるのがアメリカで、それがあるから、個別は反対でも、マーケットであるアメリカの最終判断を待ってみよう。田中角栄や、鳩山由紀夫のこともあるから、というわけである。
 はてさて、宗主国のいいなりで、属国といわれようと恬として恥じないわれわれに、トランプが大統領になる予期せぬシナリオが突き付けられようとしている。思いやり予算で他の同盟国のどこよりも駐留経費を払っていると強弁している石破地方創生担当相が、何とも哀れにしかみえない。立ち止まって深く考える機会をトランプが与えてくれたということだろう。
 参院選前に安倍政権はG7、熊本地震対策と虚飾で飾り立てようと躍起だが、小さく滑り込ませる改憲公約を絶対に忘れてはならない。

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