縁やさの会

 わが郷里・新湊ゆかりの人たちが1年に1回開く、酒席とカラオケの会がある。4年上の先輩世代7人がスタートさせ、小生含め後輩2人がそれぞれの縁で誘われた。この10年欠かさずに参加している。名称は映画「人生の約束」で一躍有名になった曳山の掛け声「えんやさー」が由来。今年は砺波ロイヤルホテルが会場で、4月28日肌寒く小雨降る天候であったが9名が集まった。先輩が高卒で、後輩が大卒だが、時代の分岐点がその辺にあるのだろう。それぞれの生き様が、時代を映し出している。

 和菓子店を経営する会長の勢いが凄い。自ら開発した「かりんとう饅頭」がヒットしている。この春先に富山駅のマルシェに出店した。後継者となった息子が、資金繰りの不安もあったが強引に押し切ったと話す顔はうれしそうだ。自社の単独店舗は初めてだが、生産が追い付かない。50年くらい和菓子店の盛衰を見てきているので、厳しい指摘も欠かさない。ヒットし続けるには、原材料の品質維持はもちろんのこと、微妙な味回しで時代の変化にも付いていかねばならない。福岡産の「名菓ひよ子」が目標。

 曳山総代など町を取り仕切る町内会長は、昨年76歳にして胃の全摘手術をした。がんは初期のものだったが幽門と噴門の2か所にあって、全摘するのがベストと判断され、内視鏡手術で摘出した。痛みもなく、こんなに簡単なのかと驚いたが、多少の不自由さはあっても、これからは儲けものの命と思うようにした。それからは頼まれたことはすべて引き受けて、日程が詰まった手帳を差し出している。10キロ痩せたが、顔色は頗るいい。

 芸術家肌タイプは絵とカラオケに生きがいを見いだしているふたり。酒が入って歌う「愛燦燦」はいつしか涙声になっている。何に対しても一生懸命で、かく生きたいと思わせる。幹事役を引き受けているのが地銀出身で実に如才がない。

 このメンバーで不思議なのは、東証1部企業の社長経験者が3人含まれていること。ところが、老後の生活スタイルが両極端に分かれる。食品流通業だが草創期で大卒第1号の入社、創業者2人の卓見が上場へと導いた。タイやハワイと高級リゾート地をビジネスクラスやクルーズを使って夫婦で巡っている。海外に出かけて10年、日本のデフレ衰退が際立っていると嘆く。ホテルのサービスだが、日本が抜群なのに費用は海外の半分、これでは従業員の給与も上らない。加えて、財閥系問屋の要求が厳しくなり、利益は販売促進費が大きな比重を占める。地域特性を生かした経営が難しくなって、経営も全く面白くない。面白くなくて経営を成長軌道に乗せることはできないと悲観論が続く。

 その対極であるふたりは工芸高校の同期、そんなほら話をおくびにも出さない。製造業だからなのか、車もマツダの大衆車で移動手段と割り切り、ホテルにしても眠れさえすれば安い方がいい、と合理主義を地でいく。先日も四国から講演を頼まれたが、マツダの車で出かけたが不都合はなかったと事もなく話す。

 はてさて、この世代までが格差を感じないで、たとえ感じたとしても、そう拘ることなく交友が続けられる最後の世代なのかもしれない。この数日後、35歳の愚息世代3人と焼肉パーテイをやったが、ひとりだけがこの連休明けに新しい就職先を確保していて、あとのふたりはフラフラしている。40年後にこんな付き合い方はできないだろう。貧困と合わせて、人格の尊厳がないがしろにされていく。危機的状況だが、このままにしていいのか。悩みは大きく、深い。しかし、この若者たち、このままで終わることはないだろう。

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