洞爺湖サミットがようやく終わった。関連報道はほとんど読まず、見ることもなく、やりすごした。無理矢理に作られたニュースというのは、何となく嘘っぽい。加えて、30億円をかけた留寿都のプレスセンターが気に入らない。廃校や炭住跡を利用するとか、貧しい日本の現実をもっと見せるべきである。往年の金持ち日本ではないのだから、その辺のところが政治家も官僚もわかっていない。
ところがサミット終了後の10日付け朝日新聞。奇妙な広告が掲載されている。何となく怪しい、裏に何かあるのではないか、第6感がうごめいた。噂の真相ではないが、貧乏人のひがみ根性で邪推してみることにした。
「まずは北海道洞爺湖サミットのご成功おめでとうございます」。あの丸顔の猪口邦子が作り笑いで応じている。議員バッジを見て、そういえば少子化担当の大臣であったことを思い出させてくれた。対するは、広告主である日本コンベンションサービスの社長・近浪弘武。同社HPには、洞爺湖サミットの準備・運営・通訳にかかる業務委託を受けています、とまるで戦果報告のように大書されている。ということは、文字通りの自画自賛広告。同社の創業者である近浪廣は「裏方は花道つくりて花を見ず」を著わしている。コンベンション事業そのものは全くの裏方であるのに、まるでサミット成功は同社のおかげとする広告は矛盾するのではないか。広告費は朝日新聞全国版5段の見開きだから、700万円前後だろう。広告不況は想像以上に厳しいので、もっと安いかもしれない。もっと勘ぐってみると、外務省からの委託費が、ジャブジャブに余裕のあるものだったと想像される。ざっと20億円前後だろうか。参加国に対してそれぞれ通訳を配し、それなりの接遇をしなければならない。それも1年余り前からの準備である。参加国数も大幅に増えているので、我らが想像をもっと超えているかもしれない。更に勘ぐれば、なぜ朝日新聞なのか。
同社の大株主は確か日本航空。創業40年というから、コンベンションビジネスの先駆的存在に間違いはない。バブルに沸いた頃がピークで、医学関連の学会、花博などの高収益事業で拡大しただろうと思われる。しかし、このビジネスは準備期間がやたらと長い。その間の人件費の立て替えなど思ったように収益が期待できないのだ。そのうえ行政などができない接待費が回されてくる。締めてみると、意外と赤字になっているケースが多い。
観光立県とか、国際会議都市宣言とかして、コンベンション誘致競争が盛んになっており、第3セクターでコンベンションビューローなるものを設立し、誘致への補助助成も手厚くしているが、所詮一過性に過ぎないことを肝に銘じておかねばならない。狩猟型ビジネスに向く人間は、ハンティングに失敗すれば、飲まず食わずの月日も覚悟しなければならないということだ。
地方のコンベンションではこんな側面もある。いわゆる東京料金。もう時効になっているから、かまわないと思うが、92年開催のジャパンエキスポ富山でのこと。あるパビリオンの運営を依頼された。約2ヵ月半の開催で、毎日4~5人の人件費が大半で3000万円だという。結果は、半分が利益として残った。富山大学生を使ったが、日雇い派遣労働のうまみを吸ったともいえる。
ところで、不況が深刻だ。富山駅前CiC入口の時計屋に修理を頼むと、社員が同じなのに社名が変わっている。時計部門を切り離すリストラで、従来通りの仕入先を確保した上で、個人で継続した。本業の主力は眼鏡であったが、弐萬圓堂、眼鏡市場の集中出店に大きな打撃を受け、CiC店の維持できないと事情を説明する社長に、何にもいえなかったという。ほぼ毎日利用する鮮魚店も浮かない顔である。売り上げが眼に見えて落ちている。これでは魚価が上がるわけもなく、漁業者の悲鳴を聞いてもどうにもならない。そんな嘆きに加えて、国際格付けAAA格の債券が次々に破綻している。国際金融情勢も想像以上に深刻だ。
待つべき時は、その日に備えて覚悟して待つ。いまはそれだけ。
コンベンションビジネス