「青春はイノチガケ」。02年に金沢・シネモンドで観た「夜を賭けて」の映画ポスターのコピーだが、いまの「れいわ新選組」山本太郎を彷彿とさせる。梁石日(ヤン・ソギル)の原作で、朝鮮戦争前後の大阪砲兵工廠跡地を舞台にした在日韓国人の鉄屑窃盗団アパッチ族の暗躍を描いている。川沿いに集落を構えて貧しい生活を営んでいた彼らは、ある日、対岸の広大な廃虚に「お宝」が埋まっていることを知る。明日の生活のために舟で運河を渡り、警察に追われながら真夜中に鉄を掘り起こすパワフルでユーモラスな人間ドラマ。その主人公・金義夫を演じるのは僕しかいない、と山本太郎が買って出た。製作費が底をつき、韓国でのロケは想像を絶する厳しさだったらしい。この映画が山本太郎を知った最初である。
政治にも演出が必要だ。いわゆるサプライズだが、知的好奇心が欠かせない。井上ひさしのいう「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに」だが、参院選に挑む「れいわ新選組」の演出はこれを地でいく。立ち上げと同時に、寄付と運動の協力を頼みながら、山本一座を思わせる装飾トラックで全国行脚をし、辻立ちをやり、雨が降りそうだと予約していた屋内会場に切り替える。ロケハンで培った臨機応変の現場感覚がとてもいい。寄付額は2億を超えて3億に迫り、10人の候補者を擁立した。
反原発が入り口だったが、彼の訴える政策は現場に通じた人間にとことん聞いて、身に付けたものである。そこに深い友情が育まれる。参院選「れいわ新選組」の10人の候補者を見てほしい。国会質問に心血を注ぎ、問題の現場に入り込み、培ってきた人脈の素晴らしさを証明している。黒澤明の「七人の侍」とどこか似ていて、わくわくする。
こんな仕掛けも潔い。新設された「特定枠」を活用し、ALS患者のふなごやすひこ(61)と重度障害のある木村英子(54)を充てた。山本自らは東京選挙区から比例区に転じ、全国的な票の掘り起こしを図るのだが、このふたりを優先し、自らは退路を断ち3人以上の当選を勝ち得ないと国会に戻れない。きょう(7月7日)の世論調査では、ひとり分の125万票に届くかどうかという。捨て身の挑戦だ。
東京選挙区に立つ野原ヨシマサは絶妙な挑戦となっている。沖縄の創価学会壮年部長で沖縄知事選ではデニーを支持した。孤立を恐れなかった。山口公明党代表が出る同じ選挙区で、辺野古移設阻止と公明党の変節を掲げて都民の良識を問う。
比例区で立つ6人は次の通りだ。蓮池透は反原発、拉致被害の急先鋒を担う、安富歩は女性装で、子供を守ろうと訴える。大西つねきは金融資本主義を根こそぎ変えるという。辻村ちひろは環境論を鋭い視点で切り込む、三井義文はコンビニ業界は人間破壊の構造そのもの、渡辺てるこはシングルマザーで派遣労働者の体験を引っ提げて貧困の現実を訴える。この野武士軍団をひとりでも多く国会へ、と願わずにはおれない。旋風を期待しつつ、この動画を見てほしい。時間のない人は後半の山本太郎の分だけでも。https://www.youtube.com/watch?v=Kxgoku9U_pg&feature=player_embedded_uturn