「早寝・早起き・朝ごはん」。これがニート対策の基本だという。夜遅くまでゲームやテレビに時間をつぶし、昼過ぎまで寝ていて、スナック菓子の食事、そんな生活態度で、働く意味を考えてみたって解決策など見えてくるわけがない。働くうえで必要なのは、意味ではなく、リズムである。実にわかりやすい。「働く過剰」(NTT出版)で玄田有史がレポートする。大人のための若者読本でもある。
正月3日に10人近い若者がわが家に集まった。当初4人の予定が見る見るうちに加わってきた。三男の富山西部中同期生たちで、22歳。就職を前に仲間内の情報が飛び交う。台所に立って、次々に彼らの胃袋を満たすものを繰り出しながら聞かせてもらった。
就職率全国1位を誇る金沢工業大学4年は、早々に白山市のソフトウエア会社に決定、「授業料は高いから当然。でも出席率とか厳しく高校生の延長みたいな大学生活だったな」と淡々。富山国際大学4年は地元の工作機械メーカーの営業に、「海外に出されるみたいだけど、いつかは地元に戻れるから。長男やし」と古風派。札幌の工科大学4年は名古屋のメーカーに、「卒業生の大半は関東、中京に。北海道では就職口はみつからない。当面は寮生活だが仕方がない」と真面目派。大学進学を断念し、美容師専門学校に進み、千葉の美容院で働くが、パートナーも美容師で同棲中、「ゆくゆくは富山で喫茶店もあるサロン風の美容院を開きたい。でも浮き沈みもあり、厳しい世界だ」と。今日の飛行機で帰らなければならないと母親が迎えに来て「結婚なんか認めないからね」と息子を睨むが、どこ吹く風と夢見る派だ。映像専門学校を出てのフリーター、CM撮影の照明助手で糊口をしのぐ、「いつも急な仕事だから、給料はいい。この状態が続くとは思わないが、チャンスを見つけなければ」と厳しい虎視眈々派。でも半数は就職が決まっていなくて、ニート予備軍だ。
会社訪問で、出身高校はどこですか、と聞かれてから、就職意欲が無くなってしまった。大学でマーケティングをやっていたが、どうしても福祉をやりたくて、専門学校に入り直す。高校を中退し、ピザの配達アルバイトで何とかしのいでいるが、まだ見えていない。そんな若者達である。
玄田はいう。失われた10年は、企業が人材育成に自信を失った年月でもあった。即戦力、成果重視主義は人を育てないし、育たない。人を育てる余裕がない、即戦力だという企業は、成長を持続させられるだろうか。また大学のたった4年間で即戦力といわれる力がつくものだろうか。どうも人材育成を放棄した社会が若者に過剰なものを求め過ぎているようだ。その結果が、若者無業の増加を生んでいるのだといえなくもない。新人が、自分は出来る人物だと自信過剰な対応と出会ったらどうだろうか。わからない、知らないを自覚しながら、もっとよくなりたいという意欲が感じられる方が余程いいに決まっている。
働くために必要なことは「ちゃんと、いいかげんに生きる」ことである。すぐに好きな仕事なんぞあるわけがない。仕事打ち上げの一杯から、働きがいが生まれることもある。人間の生理はそんな過剰に耐えられるわけがないのだ。この矛盾した働き方を会得させることが先決。
取り敢えず就職が決まった前者も、ニートやフリーターを余儀なくされた後者もそう違わない。そうやすやすと人生が決まるわけがないからだ。得意の絶頂の時に意外な落とし穴があり、失意の時に意外な拾い物があることを忘れないでもらいたい。そう人生塞翁が馬なのだ。ニート支援NPOも視野の内だが、富山には「はぐれ雲」という立派な活動をしている組織がある。
ところで、こんな若者から「リンク&モチベーション」なる企業の名前が出てきた。従業員のやる気を引き出すコンサル業らしいが、リクルート系列で大変な人気企業らしい。わがモチベーションも高まるならば、60歳退職者向けモデルも開発してほしいものだ。早寝、早起き、朝ごはんには自信があるのだから。
大人のための若者読本
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