8月30日、わが69回目の誕生日は「白やぎの村」オープンと重なり、期せずしてそこに参加した人たちに祝ってもらうことになった。白やぎの村は庄川扇状地の砺波市庄東地区にある。富山型ディサービスのポピー村、古民家を買い取って地域に開放する「庄東の家」、高齢者や障害者を介護する人たちが情報交換できるケアラーズカフェ「みやの森カフェ」を有機的につなげて地域で支えあっていこうという試みである。向こう見ずな宮崎弘美、金森美香、加藤愛理子の3人のおばさん達が立ち上げた。なんとかなるだろうというアバウトさで、もっと慎重にという忠告など聴こうともせずに昨年末にもう契約が終わっていた。思いつくと、ブレーキが利かなくなってしまう精神の持ち主である。
オープンの祝宴が開かれた「庄東の家」は、築80年ほどの伝統的な吾妻建(あずまだち)と呼ばれる切妻を東側に向け、仏間、客間などを備えた間取りで、敷地はおよそ500坪ある。散居の典型で杉の木が屋敷を囲んでいる。さすがにそのままでは住めなくて、ボランティアの協力で風呂、トイレ、床張り、そしてロフト付きのくつろぎ部屋などに必要最小限の改修を行った。地域の茶の間として、誰もが最期まで自分らしく地域で暮らせるように、ルームシェア感覚で看取りまでやる。10年前に九州・宮崎でスタートした「かあさんの家」がモデルで、ホームホスピスとしていま全国にひろがろうとしている。東京新聞が7月28日「こちら特報部」で特集し、朝日新聞は別刷グローブで8月17日報じているので参照されたい。
既に身寄りのなかったMさん(77歳・男性)を引き取り、看取りまできちんと行い、葬儀火葬まで行った。Mさんは広島の東洋工業で働き、定年後郷里の伏木に住んでいたが、がんの進行が進み、認知も加わり、施設をたらい回しにされ、遂に行くところがなくなり途方にくれていたのを、それではと引き受けたのである。また同地区に単身で住むSさんも体調をこわし、食事もままならなくなった時に、数日間預かって、元気になってふたたび家に帰している。こんな具合に、家族だけでの介護が限界に達した人や、誰にも頼ることのできない独居の人が気軽に声を掛けて、利用することができるのが「庄東の家」ということになる。
さて69歳になった老人の役割だが、1000万円近い瓦張替え費用、暖房の薪ストーブなどの費用を捻出することである。おばちゃん達はそこまで考えが及ばず、もう既に個人負担の限界は超えている。雨漏りを防がなければ、庄東の家の存続は難しい。暖房も石油ストーブというわけにはいかない。なかなかしんどいのだが、何としても活路を見出さなければならないのだ。タネ銭の100万円は用意できたが、これを10倍にする算段である。そんな思案を巡らしているところに、30日富山競輪場で、7レースの1着をすべて当てる車券が的中し、200円の購入で4億8000万円の払い戻しがあった。10倍のレースにかける手もあるということだ。またクラウドファンディングという手法もあるが、なかなかに面倒である。そういえば法隆寺の瓦寄進があった。1枚3000円単位で、寄進をお願いするのもいいかな、と思っている。
庄東の家の利用料はどうかという問い合わせだが、この際どうだろう。利賀演劇祭にならって「随意に」としたらと進言している。利賀では価格を設定するよりも、大幅に収入が上回っていると聞く。随意の志が助け合う、支え合う地域社会を持続可能にしていく。そう信じてそれに賭けてみたい。捨てたものではない、心意気の文化に期待したい。
白やぎの村
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