身辺雑感

年の瀬から年明けにかけて、いろんな人の情報が交錯する。これを楽しいといったら、愚息からたしなめられた。第三者のように、しかも上から目線で見ているだろう、苦しみ、もがいている人間もいることを忘れるな、と手厳しい。
 ビッグニュースはJICAのシニア海外ボランティアとして、この3月からアルゼンチンに出かけるわが町内で書記をお願いしている人だ。それもチリに近いところでブエノスアイレスからまた飛行機を乗り継ぎ、バスで5時間を要するという。そこで魚の養殖の指導を行なう。63歳。群馬出身ながら、北大水産学部卒で、水産試験場で働いた。動じない胆力、町内夏祭りで食材の調達を一手に引き受けた世間知、合気道で鍛えた体力と三拍子揃う。現在長野でスペイン語の特訓を含めた研修を受けている。なぜか、奥さんはうれしくて仕方がないという表情なのだが、詮索はしない。
 大晦日、近所の知人から子供3人がそれぞれに伴侶を連れて帰省しているので、一緒に呑まないかと声がかかった。幼い時から知っている子供達である。年越し蕎麦の準備も面倒臭いと用意をせず、みつくろった刺身を肴に、獺祭(酒の銘柄)を傾けていたのだが、ふたつ返事で応じた。次女の連れ合いに仕事は何をしていると聞くと、サイバーエージェントで広告代理業務を担当しているという。日経でよく眼にするので、ベンチャー程度の認識だったが、ITが手触りの現実味を帯びて感じ取れた。自ら望んでの転職で、小さいながら野心も秘めているようだ。いい面構えである。
 正月であるが、わが家も3人の愚息どもが全員揃った。孫3人を含め9人である。妻の15周忌にもあたるので、宇奈月国際ホテルに姉家族も加えて遊ぶことにした。ところがホテルの雰囲気である。ほぼ毎年利用しているが、妙に堅苦しい。不況もあってか客数も少ない、開業して25年過ぎてドアがキチンと閉まらず、メンテナンスが行き届いていない。全体が萎縮していて、仕方なしのサービスにも見える。下り坂での経営の難しさである。星野リゾートを経営する星野佳路なら、どんな手を打つのだろうかと、ふと思った。
 年賀状のトップは、親友の娘からのものだ。「おじさん、新婚生活何とか頑張っています。2月に中野(の実家)で、出産の予定です」。昨春、結婚の知らせに、茨木のり子の詩集を贈ったのだが、何とも嬉しい。親父不在な時も、酒に付き合ってくれた。慶応経済を出て、駅のそばのマルイに就職したが、すぐに金融界に転じ、アメリカ張りにキャリアを重ねている。女の一生も厳しいが、乗り切っていくだろう。
 さて最後となるが、拙著「ゆずりは通信」の書評が、月刊「年金時代」2月号に掲載された。「普通の初老のおっさんが語る 人生の面白全般」。こんな見出しだが、年友企画という編集会社を切り回す森田茂生社長が書いてくれた。昨年暮れに砺波のわが職場に取材に訪れたのだが、3歳年下だが同じ匂いがしたのであろう。2冊送ってほしいとなり、1年ぶりのユーウィン書籍売り上げとなった。もう6年も前の本だぞ、と断ったが、ネタの新鮮さは今に至るも保たれている、という過分の評である。上京の折には、呑もうと礼状を投函したが、こうして交友が今にして広がるというのはありがたいことである。
 こうして眼を凝らして見ていると、変化は少しだが見えてくる。これも社会に片足だけでも、足をかけているからだろう。ひとり暮らしでも、孤立しない暮し方、しかも孤立を恐れない矜持を持って。ということになるのだが、「連帯を求めて孤立を恐れず 力及ばずして倒れることを辞さないが 力を尽くさずして挫けることを拒否する」何か聞いたような台詞に重なってきた。ちっとも進歩していない、ということか。

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