XXとXY。Y染色体の孤軍奮闘

先日占いパーティを企画した。その一番手のモデルにされ、壇上でわが右手をとって一瞥するや否や「あなたの前世は女性でした」と宣告を受けた。男の沽券にかかわると、さすがにむっときた。ここのところがまだ旧世代の男というべきか。しかし多田富雄氏の「生命の意味論」をひらくと、それは当然のことなのだと納得させられる。

人間は22対の通常なる染色体と、性を決定する1対2本の性染色体をもっている。男性はXYであり、女性はXX。Xは生存のための重要な遺伝子を持っているが、Yは何とかして男だけを作り出そうとする、それだけの役割しか持たないけなげな存在だという。男の寿命の短さも、中年を過ぎての生命力の差もどうもここに由来していると思われる。人間の胎児は7週間までは両性を具有し、8週目あたりから分化が始まるという。ここからがY染色体の出番で、睾丸が生まれる。9週目になってY染色体上の遺伝子が必死に働き、女性生殖器を退化させていくという。どうもほっておけば全部女性になってしまう中でのYの活躍なのである。Yがサボったり、弱かったりすると性差がはっきりしなくなってしまう。また脳の男性化も睾丸からできる男性ホルモンが、血行で脳に届き男の脳が作られる。脳の発達の一定時期までに男性ホルモンが届かないと女性の脳になってしまうという。男は体も脳も女性を加工して作り出されるというわけだ。したがって前世はというより、元々はみんな女性なのだ。女っぽい男が多いのは不思議ではないのである。
ところで多田富雄氏であるが免疫遺伝学の国際的権威である。といって研究一辺倒の方ではない。能への造詣も深く、能の原作までものする大変な粋な人なのだ。白州正子とも親交があり、二人のやりとりは凡人の遠く及ばない。随筆集に「独酌余滴」がある。

一流の占い師を目指すには遺伝学を学べばよいのかもしれない。

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