11月1日深夜、「これでよし」と拳を握り、留飲を下げて眠りについた。大阪都構想ではなく大阪市廃止住民投票。反対多数で廃案となったが、終了間際まで賛成が多く、やはりダメかと思った矢先に反対票がなだれ込んで逃げ切った。反対50.6%に対し、賛成49.4%の僅差である。わが最大の懸念は、維新が勢いづくこと。自民の補完勢力として、権力の露払い役だが、この間腹立たしい思いで大阪を見ていた。加えて理非もなく選挙にこだわる公明党の節操の無さもここで断罪しなければならないと思っていた。自民大阪府連と共産党が一緒に反対を叫んでいる風景は異様だが、政治のダイナミズムはこうであらねばならない。一方で山本太郎が終始大阪に張り付いて街宣をしている光景を見せられると、山本太郎を総理候補にして次なる総選挙を戦うのも悪くはないと思えてくる。30年続く停滞、逼塞にもだえている大衆の苦しみを立憲野党はどう汲み取っていくのか。正念場といっていい。
ちょっと希望の持てる法案が今国会に提出されている。労働者協同組合(ワーカーズコープ)法案だが、超党派でしかも全党、全会派の賛同を得ている。組合員が出資し、組合員の意見を反映して事業を行い、組合員自らが従事することを基本原理とし、雇用・被雇用との関係ではない働き方を模索する。NPO法人と比べても使い勝手がよく、地域での創業に弾みがつく。次期国会での成立は確実といっていい。この考え方のスタートは79年、失業者や高齢者の仕事づくりを目指した中高年雇用福祉事業団で、ここまで引っ張ってきたリーダーのひとりが永戸祐三である。2012年ぐらいだったか、東京で勉強会があり参加したら、夜の懇親会に誘われた。同じ世代で学生運動あがり、ヒトをその気にさせるオルグ能力は高そうだが、多少理に走りすぎるのでは、と気になった。法案が陽の目を見ようとしているのだから、大したものである。
この法案のみそは、当事者主体でやってみたらどうかと問いかけていること。永戸流に言えば、「団塊世代よ、ぼやいているなら、自分でやってみろよ」と挑発している。退職金の一部を出資して、自らの才覚を世に問うて、その成果は自ら得ることができるシステムでもある。その意味では地域コミュニティの福祉、農業、流通などコミュニティビジネスに最適な組織形態といえる。さぁ、どう展開していくか、注目したい。
早速この話を、介護施設に絶望し、自ら訪問介護事業を立ち上げたいとしているケアマネに話をしたら、NPOよりいいねと返ってきた。「理想の働き方は組織がいいから、できるわけではなく、結局は経営する人の心構えに尽きるのよ」。「あんたの退職金の残り、こっちに出資してよ。寂しい死に際をちょっとはましなものにしてあげるから」。コロナ禍でカネを回せという現実が、すぐそばにある。
雇わず、雇われない働き方とは、自発的な労働意欲に期待している。しかし、それは理想を述べているに過ぎない。強欲な資本家と隷従する労働者、これほど続いてきた資本主義のシステムが法案ひとつで変わるわけがないというのも本音であろう。資本主義と民主主義の兼ね合いだが、何もしなければ、歴史は動かない。
持論をいえば、200戸くらいの町内会にひとつ、この組織があれば、地域の悩み事が解決されていく。できれば大阪市を存続させたエネルギーを、住民自治に向けた試みに注いでほしい。やってみなはれ、大阪ワーカーズコープ。