オーストラリア元首相フレイザーが日本をどう認識しているか、それから紹介したい。「日本が防衛上で米国の支援を受けられないと感じれば、核武装に進むだろう。日本には十分な材料、兵器に転用する技術とそれを可能にする技術者、ロケットと発射技術があり、最短で1ヵ月半程度で核兵器が開発できる。日本の核武装を防ぐために米国は本位でもない日中軍事衝突で日本に加担せざるを得ないと考えているのではないか」「靖国神社への参拝や奉納は、安倍首相が作ろうとしている日本の象徴である」。「中国はアヘン戦争以降100年間にわたり欧米列強や日本の手で屈辱を味わっており、その弱体化した期間に失ったものを取り戻すことを命題にしている。尖閣・釣魚諸島は1895年に日清戦争の戦果として日本が入手したとする中国・台湾の主張に十分根拠がある。領有権の主張を凍結し、資源開発などのための平和的に協力する枠組みを構築すべきである」。海外から日本がどうみられているのか、頭を冷やして考えるきっかけとしたい。
安倍首相がオーストラリアのアボット首相から「アジアで最良の友」と呼ばれて、悦に入っているのを見て、はてどうしてと疑問に思っていた。そんな矢先に「戦略的依存に終止符を」(世界7月号)という杉田弘也・神奈川大学特認教授の論考が眼に入ったのである。冒頭のそれは杉田がフレイザーにインタビューしたものである。オーストラリア・リベラル保守のラディカルな提言、という副題が付いている。
お互い日米同盟、米豪同盟を持ち、保革ともに外交政策は米国との同盟関係を前提としている。オーストラリアの政治変遷は安倍以降を考える時に貴重なモデルになると思う。
英国の植民地であった42年までは大英帝国の、それ以降は米国の圧倒的な軍事力の庇護下にあり、危機があれば同盟国の救援があると信じてきた。その代償として、中国義和団事件、第1次、第2次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム、湾岸、アフガン、イラクなど英米の戦争や侵略に加わることはもちろん、平時からもその世界戦略に追随することを外交安全保障の基本としてきた。フレイザーはこの外交方針を「戦略的依存」と呼ぶ。
こうした依存政策を推進してきた保守党政権に距離を置こうとしたのがウィットラム労働党政権で、ベトナム戦争からの即時撤退や中華人民共和国の承認など、それまでの政策を矢継ぎ早に覆した。その後保守党、労働党と政権は変わるが労働党といえども米国との同盟関係を前提としており、海兵隊のダーウィン駐留などは労働党が決めている。アボット政権はもちろん保守党だが、米国との関係は前労働党政権を引き継いで強化しているだけである。そしてどういうわけか安倍政権の外交政策を高く評価し、中国側を刺激している。かの日独伊三国同盟を夢見ていなければいいのだが、日豪共同開発潜水艦などは願い下げである。
さて、滋賀県知事選が三日月知事となり、ようやく一矢報いた感じだが、2年後の16年夏の参院選、同冬の衆院選はどうなるか予断を許さない。朝日新聞によると、この知事選で自民党衆院議員が応援演説で「集団的自演権にイエスかノーか。今回の選挙は安部政権を信任するかどうかを決める選挙だと報道されている。ならば自民党はこの選挙で負けるわけにはいかない」と叫んだ。これを聴いた約300人の聴衆は静まりかえった、という。陣営幹部はこの議員を「何を考えているんだ」としかりつけたというが、ようやく本音が出て、自民党推薦候補に投票することはどうなることか、と初めて気付かされたのである。
オーストラリアがそうであるようにリベラルな政策を推進していく受け皿勢力をこの2年間で作っていかねばならない。
日米同盟と豪米同盟
-
-
-
-
B! -