高齢者専用賃貸住宅(高専賃)の運営をNPO法人でやったらどうか、と提案したところ、とても難しいという壁にぶつかった。この地域ではNPOを説明するのも難しく、最初につまずいてしまう。しかも寄付とボランティアのイメージが強く、なぜボランティアに委託費なのか、とても言い出せない。突き詰めていくと責任主体が消えてしまうのではないか、そんな組織が長続きするのか、などなど。壁はとても厚そうに見える。
提案の趣旨はこうだ。入居者は60歳以上で、自立した生活を営めるのが条件だが、早晩認知症などの発症リスクを誰もが抱え込んでいる。そんな不安に、必要最小限の“おじいさん管理人”の3交替管理では、とても覚束ないのは明白。認知症の予防を前提とし、そうなった時の対策をどうするか、備えておくべきである。何よりも他の入居者に迷惑がかかり、突然の退去通告では無責任であり、家族にしてもとても受け入れられないだろう。これが何よりの先決課題。そのために、健康情報を共有し、あらゆるリスクにも対応できる、心地よいコミュニティを作り上げていくべきで、機転のきいた小気味のいい、健康福祉文化に通じた“コンシェルジェ”的な管理人が必要である。入居者自治に加えて、地域への展開を考えれば、NPOこそ最適な組織だ、というもの。
さてどうしたものか、と思っているところに、「経営力向上目指し、NPO全国で連携組織発足へ」(5月9日北陸中日新聞)という見出しが飛び込んできた。日本サードセクター経営者協会で、通称JACEVO(ジャキーヴォ)と呼び、9月1日スタートさせるという。発起人は後房雄・名古屋大学大学院法学研究所教授。富山県氷見市出身である。これも縁ということで、6月1日名古屋で開かれた会員募集のためのフォーラムに出かけた。もちろん北陸東海自動車道を走る高速バス利用で3時間半、この4月から相棒となった大学院生のY君も同行した。
これからは、名古屋市に注目である。民主党・河村たかしが名古屋市長戦出馬に際して、そのマニフェストづくりを指南したのが発起人・後教授。圧倒的な投票で当選した河村市長は、その野心的な試みを現実に展開しようとしている。微妙ないい回しながら、例えば子供への虐待から守る行政施策を、すべてNPOにゆだねるということが名古屋市で実践されるという。その他にもあり、NPOが公共サービスを担えるかどうかの試金石でもある。行政施策の実施はほとんど「官」が担ってきたが、その肥大化、非効率は目に余ってきているのだが、官から民へという掛け声だけで、担い手をどうするかはなおざりになっていた。そこへの切込みでもある。
NPO法(特定非営利活動促進法)が成立して11年が過ぎる。全国でほぼ3万6000のNPO法人が活動している。ところが社会的にインパクトのある活動が可能となる年間財政規模3000万円規模となると、NPO法人の14%に過ぎない。事務局スタッフを抱えるのはその60%で、多くが1~2人、常勤スタッフの年間給与は166万円となる。最大の原因はリーダーの意識にあり、草の根主義、功利への過度な嫌悪など、とかく内向きになりがちだとする。その意識改革こそJACEVOの目的ということになる。
二宮尊徳いわく「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」。このバランス感覚を、高いレベルで求めていくものと理解し、富山県第1号のJACEVO会員となることを決めた。JACEVOというのは、ロンドンに本拠地を置くACEVO(全英サードセクター組織)をモデルにした日本版という意味である。しかるにサードセクターとは、「官」と「民」に並ぶ3番目の組織分野で、社会的課題を解決する広範な組織群を示す。
成算があるわけではないが、とにかく今は前に進むしかないだろうという心境である。悩める若者達よ!身近に君達を必要としている分野があることを忘れないでほしい。
名古屋市に注目!
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