どうして地球に生命が宿ったのか。そこから切り出さなければならない。46億年前だといわれている。それまでは、太陽から降り注ぐ放射能と紫外線が生命を許さなかった。ほどよく冷えて、つまり放射能が減ってきて、水があったことによって光合成ができて、酸素がオゾンを発生させた。これが紫外線をさえぎり、生命がようやくにして生まれ、形作られてきたのである。人類は放射能から逃れることで、生き延びてきた。それをわざわざ、もう一度自らの手で、放射能を作り出したのが「原子力」なのだ。高木仁三郎と柳澤桂子からの受け売りであるが、突きつけられた思いである。
6月12日、ドキュメンタリー映画「ミツバチの羽音と地球の回転」を小杉町ラポールで見る機会を得た。山口県上関原発計画に抵抗する祝島の人々の日常を丁寧に追っているのだが、こんなシーンがあった。測量に入るために海にブイを投げ込む中国電力の社員が船上からこう叫ぶ。「1次産業では豊かになれません。この計画で雇用が確保され、豊かな生活が保障されます」。若き島民がいい返す。「馬鹿いえ!こちらは豊かな生活をしとるんじゃ。余計なことはするな!さっさと帰れ」。この若き島民は活動も凄いが、生活もしっかりしている。海草を採り、畑で野菜、斜面でびわを育てる。ブランドを意識し、マーケティング感覚をもってやっているのだ。自立し、永続させる生活、地域とはどういうものかを指し示している。
映画もよかったが、監督・鎌仲ひとみのトークが凄かった。東京電力を維持したままでは何も変わらない。東京電力は潰すべしと断言する。それは映画の後段テーマ、スウェーデンでの電力の自由な選択取材で裏打ちされているのだが、会場は何をいい出すんだ、と一瞬凍りついた。「動けば動くほど、新しい人に出会い、新しい思考と邂逅する。行動すれば移動すればそれは変化していく」と、ツイッターで叱咤するが、行動の人なのである。
氷見生まれの53歳だが、早稲田大学2文卒が効いている。2文というのは夜間部を指すが、苦学生を意味しない。そもそも大学などに微塵も期待していない。大学に集る面白い人間と交わることで、次の人生を切り開くステップにしていこうという野心を持つ人種の学部なのだ。彼女は映像に出会い、カナダ、アメリカ修業を経て、開花したのである。画面に延々と続く協力者名に、いかに資金作りに苦労しているか、これにも頭が下がった。
これに加えて、地下500メートルに放射性廃棄物を埋設する永久処分場を記録したフインランド映画「100,000年後の安全」と併せて観れば、原発の真相は見えてくるに違いない。
日本ではどうするのか。六ヶ所村に押し込めると誰がいえるのか。ちなみに高木仁三郎はこういっている。「作った原発で引き受けざるを得ないと思います。原発を引き受けるということは、その廃棄物も含んでいると考えないといけない。使用済燃料棒を移動させること自体に危険が伴うから難しいのです」。もしそうだとすれば、福島はどうなるのだ。本当に福島に強いられるのか。海江田の原発再稼動要請は、この問題にも当然言及しなければならない。誰が次の首班になるのか知らないが、その男もどう考えているのか、明確にすべきだと思う。菅も居座るだけでなく、虎の尾を踏んだというのなら、2度も3度も踏みにじってしまう覚悟で、この問題でホンネをいうべきである。名もない不安定な下請け、孫請け労働者に決死の作業を強いているくせに、口をぬぐうとは卑怯である。
人間というのは非常にぼんやりとした生きものだと思う。この老人も然り。その人間に絶対にミスを許さない労働を押し付けることができるだろうか。そこから考えよう。
さて、われら老人よ。声高に脱原発だのと叫ぶのだけはやめよう。その前にやることがある。放射線の肉体的感受性が鈍いのは60歳以上の男性だという。役立たず老人の福島への強制集団移住こそ唯一の解決策ということになる。この覚悟なくして、モノ申すな!もちろん酒飲み放題、ギャンブル解放特区になることは間違いない。
ミツバチの羽音
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