久しぶりにウオッカを飲んだ。やはりロシアの匂いがして、口に含むとこんな記憶がよみがえってくる。ひとつは、なぜか映画ドクトルジバゴのシーンが鮮明に思い出される。淫蕩な悪徳弁護士コマロフスキーが厳寒のさ中に帰宅し、ウオッカを口に放り込んで企みをめぐらす。その企みがジバゴとラーラの仲を切り裂いていくのだが、ウオッカの持つ魔性の刺激を思わずにはおれない。ドクトルジバゴはロシア革命の光と影をさらけ出してくれ、そしてその影は冷酷悲惨なスターリン主義を生みだす土壌になっていったことを教えてくれた。わがシネマ投票ではナンバー1としている。いまひとつは亡妻がロシアとの貿易実務を伏木海陸運送でやっていた関係で、伏木港に入ったロシア船に招かれる時があった。たまに同席させてもらったが、その時もウオッカが振舞われる。亡妻は調子に乗って呑むなと何度も釘を刺すのだが、スパシーバ(ありがとう)、パジャールスタ(どういたしまして)を繰り返すうちに忘れてしまって、つい杯を重ねて酔ってしまう。何とも懐かしい記憶である。
そんなことを思いながらウオッカを重ねたのは、新宿東口にあるロシア料理・スンガリー本店。加藤登紀子の店といった方がわかりやすい。店名の由来は、終戦直後まで加藤一家が暮らしていたハルピン市を流れる松花江のロシア語読みである。そういえばロシア民謡をこれでもかと歌いつくした歌声喫茶「ともしび」もこの近くであった。
またまたセンチメンタルな回顧談に終始することになるので、ウオッカから泡盛に話題を変えたい。いま確信に近い思いを抱いているのだが、ひょっとして沖縄の辺野古問題がテコとなって日本が変わるのではないかということ。翁長雄志沖縄県知事の菅官房長官、アベクンを向こうに回しての会談だったが、二人より数段上の役者ぶりで大いに溜飲を下げている。約20万人が斃れた沖縄戦、先祖伝来の土地の強制収用、過酷な米軍統治、核持ち込みの沖縄返還を挙げて、辺野古基地建設は受け入れられない。こういい切る知事に、辺野古移設しか選択肢はないとオーム返しにいう二人に説得力があるはずがない。ひたすら日米同盟と国益のためという独りよがりの疑似ナショナリズムへの断固たる批判であり、これを論破することは不可能と思われる。「沖縄県知事は日本国民全体から徴収した税金で、日本政府の政策に反対する政治活動をしている」という浅はかな論を持ち出してきているが、小賢しい広報担当の世耕弘成官房副長官の限界を見せ付けるものだ。
そんな国家権力に立ち向かう沖縄の義挙を応援しようと、辺野古基金が創設された。代表には沖縄経済人に加えて元外務省主任分析官の佐藤優、俳優の故菅原文太夫人も名を連ねている。安倍訪米のタイミングで米国有力紙に意見広告を掲載するというが、直接米国民に訴える寸法である。もはや、日本国民を相手にしてもしようがないということでもある。そして、ここで手を拱いていては、卑怯といわざるを得ない。せめて酒ぐらいを我慢して振り込むべきだろう。HPに口座が記されている。ささやかな連帯の意志をしめそうではないか。
メルケル独首相の訪日も、アベクンとのレベルの差を見せ付けてくれた。脱原発もそうだが、歴史認識では日本の右傾化を本当に懸念して、朝日新聞を講演先に選んでいる。このリーダーの資質の差は大きい。沖縄から戦線を立て直して、出直そうではないか。
はてさて老人ミーハーは4月12日、もういいだろうと北陸新幹線に乗車した。開業して1ヶ月となり、乗ってみようかという気分だったが、旧知の名鉄観光・真木さんが隣席に座るというハプニングもあり、2時間8分があっという間に過ぎてしまった。果たして費用対効果はどんなものだろう。大いに疑問を抱いている。
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